インターネットで便利に買えるものを敢えてリアルの書店で買う必要はない、という声を聞くと、アマゾンジャパンの立ち上げの一端に居た身としては、なんだか複雑な気持ちになるが、同研究所によると、2000年前後には約2.5兆円あった書籍と雑誌の出版市場は、2022年には約1.6兆円となっており、購買様式の変化に加えて、市場そのものが縮小してきたことも大きな要因のように思える。
縮小した市場の内訳を見ると、書籍は約1兆円から約6500億円に、雑誌は1.5兆円から約4800億円となり、2016年には書籍と雑誌と市場規模が逆転している。代わりに台頭しているのが、電子出版の約5000億円である。
コンビニエンスストアでの雑誌の取り扱いも縮小しており、大手取次のトーハンが2025年3月にファミリーマートとローソンへの雑誌の配送を終了するとの新聞記事も出ている(日本経済新聞:2024年7月19日記事)。
466億GBのデータが——
その一方で「文字を読む量が減っているのか」と問われると、そうでもない気がするのは私だけだろうか。電車に乗れば、スマートフォンで漫画も含め、文字を読んでいる人は多い。令和5年版の情報通信白書によると、2020年の世界のスマートフォンのデータトラヒック量は46.6EB(エクサバイト)だったのに対し、2024年には140.5EBに増えている。
1EBは10億GB(ギガバイト)。46.6EBは466億GBになる。一般的なHD画質(720p)で動画を見ると約1GB(ギガバイト)消費するから、動画に換算すると466億時間分、それが、わずが4年で1450億時間分に相当するデータに肥大化し、世界中をかけめぐっていることになる。



