競争が激しく、転職者も多いテクノロジー業界で、山下が得た知見と、その経験からたどり着いた「仕事論」とは。自身のキャリアから、AI(人工知能)がデザインにもたらす影響、そして仕事の未来まで幅広く語ったインタビューをノーカットでお届けする(編集部註:英語で行われたインタビューを翻訳・編集しています)。
──まずは、今までのキャリアについて伺えれば。山下さんはハーバード大学を卒業後、マイクロソフトを経てグーグル、Uber、そして今はFigmaでChief Product Officer(CPO; 最高製品責任者)を務めておられます。各社での役割と、そこで得た学びがあれば教えていただけませんでしょうか。
山下祐樹(以下、山下):マイクロソフトでは、ウェブメールサービス「Hotmail(ホットメール)」の開発に携わっていました。それをOutlook.comにブランド変更するプロジェクトの一員でした。当時、マイクロソフトにはメール担当チームが10もありました。私は、ユーザーに新機能を案内するUX(ユーザー体験)デザインの担当でした。
主に2つのことを学んだと思います。1つ目は企業文化。その頃は箱入りパッケージソフトウェアを出荷する文化が残っていたので、念入りなソフトウェアテストや、細部へのこだわりが強く、すべてを“正しく”という文化でした。今のマイクロソフトは企業文化が少し変わったかもしれません。でも当時の私の仕事は、細部まで計算された完璧な仕様書を書くことでした。不備があった際に、仕様の変更を承認してもらう手続きも煩雑でした。あらゆる仕様が完璧でなくてはいけない。そういう厳しい企業文化なので、細部に注意を払う大切さを学びましたね。ユーザーにとっては大切なことだからです。だからこそ、社員は徹底的に考え抜かなければなりませんでした。
2つ目が、「サーバント・リーダーシップ(組織に奉仕するリーダー)」。私の役目は、エンジニアが気持ちよく働けるようにすることでした。エンジニアの代わりに会議でメモを取ったり、困っていることを手伝ったり。プロダクト・マネジャーは「製品のCEO」だと思われがちですが、マイクロソフトでは違いました。