欧州

2024.04.13

英警察の顔認識を用いた「万引き犯」摘発に市民団体が反発

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英国政府は、公共の場における顔認識技術の適用範囲を拡大し、小売業界で増加する万引きや窃盗の防止に役立てようとしている。

英内務省は、今後4年間で5550万ポンド(約106億円)を顔認識技術に投資する計画を明かしており、そのうちの400万ポンドは今年から全国の繁華街に配備予定の自動車型監視システムに充てられる。

警察は、万引きを繰り返す人物や指名手配犯らを特定するために、人混みでリアルタイムの顔認識システムを使用する。そして、地域の警察に警告を発し、彼らの追跡を試みる。

「小売業界における犯罪を放置することは、社会を守る法と秩序の基盤を揺るがすことにつながる。我々はこの計画を強化し、ゼロ・トレランス(ゼロ容認)のアプローチを導入する」とジェームズ・クレバリー内務大臣は述べている。

この計画は、小売業者が警察と情報を共有し、顔認識技術を用いて監視カメラの映像からより多くの犯罪者を特定する試みであるプロジェクト・ペガサスに続くものだ。しかし、この計画は市民団体からの非難を浴びている。

NGOビッグ・ブラザー・ウォッチでディレクターを務めるシルキー・カルロは、現状、暴力的万引きの犯の摘発率が最大40%程度でしかないことを考えると、この計画はまったく馬鹿げていると述べている。

「危険で権威主義的で不正確なテクノロジーに公金をつぎ込むのは、ひどい無駄遣いだ。このプロジェクトは、財政だけでなく、国民のプライバシーと市民的自由を脅かすものだ」と彼は主張している。

英内務省は以前から顔認識システムに熱意を示しており、クリス・フィルプ警察相は昨年の会議で、監視カメラなどから入手した映像を用いた顔認証技術による監視を、さらに増やすべきだと述べていた。

ただ、その精度が疑問視されているのも確かだ。「リアルタイムの顔認識は中国やロシアでは当たり前のことかもしれないが、こうした政府の計画は、英国を他の民主主義諸国から切り離すことにつながる」と、ビッグ・ブラザー・ウォッチのカルロは述べている。

(forbes.com 原文

編集=上田裕資

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