IEAは15日に発表した報告書「石炭2023」の中で、今年の石炭需要が昨年比1.4%増の85億4000万トンに増加したと推定。主な要因として、電力需要が増加した一方で水力発電の発電量が低下したことにより、石炭使用量がインドで8%、中国で5%増加したと指摘した。
今年末までに石炭消費量が最も減少するのは米国と欧州連合(EU)で、その減少幅は20%と見積もられている。日本、韓国、カナダ、オーストラリアといった他の先進国の減少幅はこれより小さい。
IEAは、たとえ各国政府が厳格な気候変動対策やクリーンエネルギー政策を実施しなくても、世界の石炭需要は2024年には減少に転じ、2026年まで横ばいになると予測している。ただ、向こう数年間で石炭の利用は減少するものの、2026年まで消費量は80億トンを上回ると見ており、地球温暖化対策の枠組みである「パリ協定」の目標を達成するためには「衰えを見せない石炭の使用量を早急に減らしていく必要がある」と促している。
報告書は、石炭消費・生産・輸入量がいずれも世界最大の中国が、世界の石炭消費を予測する上で鍵となるとしている。中国は、水力発電が十分機能しない場合に石炭火力発電で電力を賄っている。中国の石炭使用量は、水力発電の回復に伴って来年は減少すると予想されているが、インドをはじめとするその他の新興国は、電力需要を満たすために最も環境に悪い化石燃料である石炭に大きく依存し続けるものと見られる。
石炭は世界で最も利用されている発電源であり、鉄鋼やセメントなどの産業を支える主要燃料でもある。他方で、人間の活動による二酸化炭素排出の最大の要因でもある。
今回の報告書は、アラブ首長国連邦のドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が閉幕した2日後に発表された。同会議では、石炭が化石燃料の中で唯一、強い言葉で標的にされた。最終合意では「衰えを見せない石炭火力発電の段階的削減」に向けた努力を加速することが求められた。100カ国以上が、すべての化石燃料に石炭と同様の文言を適用するよう要求していたが、サウジアラビアが主導する産油国連合の石油輸出国機構(OPEC)がこれに反対。最終合意では、2050年までに炭素排出を実質ゼロにする「ネットゼロ」を達成するため、化石燃料からの脱却を「公正で秩序ある、公平な方法で進める」よう求めている。
(forbes.com 原文)