8月14日深夜にサウス・オブ・マーケット地区の事故現場に急行した救急隊員らは、車にはねられ大量に出血している人を発見した。サンフランシスコ消防局(SFFD)の記録によると、2台のクルーズのロボタクシーが救急車の走行を妨害し、医療処置が遅れたという。患者は近くの病院に運ばれてから20~30分後に死亡した。
しかし、クルーズは彼らの車両のせいで救急車が遅れたことを否定している。同社の広報担当のティファニー・テストは「救急車は、当社のロボタクシーを追い越すことが十分可能だった」とEメールでコメントした。フォーブスが確認した動画には、多くの車両がロボタクシーの隣の車線を走行している様子が映っていたが、大型の救急車が同じようにその車線を通過できたかどうかは定かではない。
この事件の発生は、8月10日にカリフォルニア州の公益事業委員会(CPUC)がクルーズとウェイモにサンフランシスコでのロボタクシー事業の拡大を許可したわずか4日後という皮肉なタイミングだった。SFFDによると、クルーズとアルファベット傘下のウェイモは過去16カ月間で、少なくとも74件の同様な事件をサンフランシスコで発生させている。
「救急車や消防車の仕事は一刻一秒を争うものだ。火災は1分で大きさが倍になることもあるし、医療コールでは、さらに1分かかれば、文字どおり人が死ぬリスクが増大する」とSFFDのジェニーン・ニコルソン署長はフォーブスに語った。
この事故の後、カリフォルニア州の自動車局はクルーズに対し、地元で稼働している車両を半減させるよう命じた。しかし、それでもなおサンフランシスコは他のどの都市よりも多くのロボタクシーを走行させており、先端テクノロジーの実験場であるこの街は、今後の10年の終わりには数千億ドル規模の追加の収益を自動運転関連の企業にもたらすとマッキンゼーは予測している。
8月17日の別の事件では、赤信号の交差点を通過しようとしていた消防車にクルーズのロボタクシーが衝突した。自動運転で走行する車両は、本来なら優先すべき緊急車両を無視して左折したという。
クルーズは現在、サンフランシスコで約200台のロボタクシーを配備しており、ウェイモは250台を配備している。SFFDが報告した74件の妨害事案のうち52件がクルーズに絡むもので、21件がウェイモに絡むものだった。