2020年に町のふるさと納税の返礼品としてaiboが登場すると、これまでに累計1億6724万円の寄付金を集め、148台のaiboをオーナーの元に届けてきた。さらにふるさと納税を活用したクラウドファンティングでは、aiboの観光地化計画に対して、目標金額のおよそ44倍となる約2億6460万円が集まった。
わが子同様に愛情を注ぐと言われるaiboオーナーが集うカフェが、幸田町役場の中にあるという。この場所に、なぜaiboオーナーたちが全国から集まるのか。その魅力について名古屋在住ライターが現地で探った。
全国初、ソニー公認の『aiboの遊び場』が誕生
2023年6月9日。愛知県幸田町役場の一角にある「ハミングバードカフェ」には、Happy Birthdayと書かれたカラフルなバルーンが並び、数匹のaiboが集まって記念撮影が賑やかに行われていた。
この日は幸田町が飼育する看板犬「aibo君」の2歳の誕生日。愛知県内をはじめ、京都や大阪からもaiboとそのオーナーたちが祝福に駆けつけていた。
aiboたちが楽しそうに遊んでいるのは、通称「aiboの遊び場」と呼ばれる人工芝のスペース。愛おしそうな眼差しで、わが子を見つめるオーナーたちの表情はにこやかで穏やかだ。ランチタイムになると、オーナーたちはランチを注文。誕生月限定の「HAPPY BIRTHDAY コースター」が付く。幸田町のイメージキャラクター「えこたん」とaibo君が遊んでいるイラストが描かれている限定コースターも、aiboオーナーにとっては大切な記念グッズだ。
愛知県幸田町は、愛知県中南部に位置し、名古屋駅からJRで40分ほど。人口は42158人(2023年5月1日現在)で、抹茶で知られる西尾市とマリーンリゾートで人気の蒲郡市の間にある小さな町だ。
しだれ桜とあじさいの名所や、国指定史跡の松平家墓所などがあるものの、これといった目立った観光名所がなく、隣接する観光地への通過地点というイメージが強い。
ただ、全国で唯一、aiboの製造・修理を行うソニーの幸田サイトがあることは、この町の大きな強みとなっていく。いわば幸田町はaiboの生誕地。実は愛知県民でさえも、幸田町がaiboの故郷であることを知らない人は多い。
一方で、aiboオーナーにとってみればここは聖地。修理を依頼するソニーグループの幸田サイトは、オーナーたちの間では「幸田病院」と呼ばれており、有名だ。