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2023.06.23 14:00

日本発「作曲AI」が北米などでユーザー急増 海外で売れるものの作り方

SOUNDRAW代表の楠太吾(撮影=曽川拓哉)

SOUNDRAW代表の楠太吾(撮影=曽川拓哉)

2020年に創業したSOUNDRAW(サウンドロー)は、「音楽生成AI」を提供している急成長スタートアップだ。
 
同社のサービスでは、曲のムードやテーマ、長さを選択することで、自分の制作した動画に合った曲を生成することができるもの。わずか10秒で、AIが15曲を作り、イメージに合ったものがなければ再度生成することができる。
 
ユーザーは毎月1000人のペースで増えているといい、月額$19.99の有料プランには6000人以上が登録しており、7割は北米をはじめとした海外のユーザーだという。しかも広告等の施策は用いず、口コミで海外の支持を増やしている。
 
なぜ海外で売れるものをつくることができるのか。SOUNDRAW代表の楠太吾に、海外で勝つスタートアップのヒントを聞いた。
 

学習データを自作

SOUNDRAWの主なユーザーは、YouTube、テレビ、ゲームなどの動画クリエイターだ。これまでは、映像に合った曲を探すのが通常だった。それが、自分の作品にあったものを作ってもらう、というのはAI時代の新しいアプローチである。


 
サービスの強みは、曲のクオリティと音質にある。一般的に、優秀なAIには膨大でかつ優秀な教師データが欠かせない。SOUNDRAWは、作曲家を社内に抱え、オリジナルでクオリティの高いデータを作成。それをAIに読み込ませることで、クリエイターのニーズを満たすだけの高品質な音楽をつくることができている。

AI作曲のサービスはいくつか存在するが「このクオリティの音楽を自由にカスタマイズする形で提供できているサービスは他にない」と楠は言う。
 
そのうえで昨今課題とされているAIの著作権にも言及し、「世界的にルールが確立されていないですが、我々は全ての教師データを内製化しているため、ルール変更があってもリスクなく運用できます」と胸を張る。

17カ国でガジェット販売を経験

では、なぜ作曲AIで世界に勝負を挑んだのか。楠は次のように答える。
 
「世界で勝つためには、世界中で共通する課題を解決するビジネスモデルがいいと思いました。そのなかで音楽は世界の共通言語。そしてクリエイターの考えることは似ています。今のサービスであれば、『動画にあった音楽が欲しい』というユーザーのニーズを満たすものになっています」
 
ビジネスモデルの選定から勝負は始まっている。楠がそう気付いたのは、SOUNDRAWを創業する前のこと。2017年に、身体の動きに合わせて音を奏でることができるウェアラブル楽器ガジェット「SoundMoovz」を開発し、世界17カ国で販売にこぎつけた経験からだった。
 
世界のおもちゃの商談会で、自らダンスパフォーマンスをしながらガジェットを披露したところ、イギリス人バイヤーの目に止まり、世界の道が拓けていった。
 
「日本人は過度に謙遜したり海外を恐れたりする。でも意外と通用するんだと自信がつきました。たとえ英語が苦手でも、いいものを作って売り込めばいいんです」
 
 

後にキーマンとなるバイヤーに声をかけられたときは「怪しんだ」と話す楠。しかし来た波を逃さず、一方で契約条件の確認は慎重に行なった。
 
初の海外挑戦で大きな成功を収めたが、同時に少々苦い教訓も得た。
 
「ブームは作れたけど、ブームはいつか終わってしまうんです。世界共通の課題を解決するビジネスモデルを生み出さないと、世界で勝ち続けられないんだなと思いましたね」
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文=井澤梓 編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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