彼がCEOを務める、2005年創業の米コンテンツマネジメント企業「Box(ボックス)」は、財務諸表や法務契約書、マーケティング資料などの経営情報の共有を効率化する製品やサービスを開発。クラウド上で容易に「コンテンツ」を管理・作成することが可能で、現在は11万5000社以上の顧客を抱えている。
同社は2023年5月上旬、生成AI開発企業「OpenAI(オープンAI)」との提携を発表。AIモデル「ChatGPT」のAPIをBoxに統合した新機能「Box AI」を開発中だと明かした。レヴィCEOに今回、ポストコロナの働き方やグローバル企業経営、AIブーム、AIだからこそ掘り起こせる“社内の眠れる宝”について語ってもらった。
──AIについて話す前に、この数年について振り返りたいのですが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が「働き方」に与えた影響についてどのように見ていますか?
コロナ禍は、仕事のありかたを根本的に変えたと思います。ほとんどの組織が、オフィスと在宅というハイブリッドな方法で、効果的に働けることを証明したのではないでしょうか。新型コロナウイルスとの共生が一般的になった現在でも、人々は柔軟で自由な働き方を望んでいます。過去何十年も続いてきたような、週5日オフィス勤務が当たり前という働きかたには戻らないでしょう。
──2015年に初めて取材した頃から、Boxの製品で「日本の働き方革命に寄与したい」というようなことを話していましたね。他の先進国と比べ、日本は働き方に関しては特に遅れています。皮肉にも、コロナ禍がその改革を促したという見方もありますが。
世界全体が柔軟な働きかたに適応できるようになってきたと思いますね。事実、各国で在宅勤務可の会社が増えています。私は昨年10月、日本へ短期出張をしてお客さまに会ったのですが、とある大企業は、リモートワークを許容する働き方に移行していました。これは大きな驚きでしたよ。日本の組織は伝統的に、厳格なヒエラルキーのもと、規律正しいオペレーションを行いますから。それが、協働的でオープンな分散型の企業文化にシフトしていたのです。働き方に新しいダイナミズムを感じましたね。
──その一方で、各社が従業員に「RTO(オフィス復帰)」を求める揺り戻しが起きています。オフィス勤務とリモートワークにはそれぞれ一長一短あると思いますが、Boxではどのような職場方針を考えていますか?
レヴィ:オフィスに近い場所で暮らす社員には、なるべく職場に来てほしいと思っています。それが週に2〜3日であっても、です。直接会って一緒に仕事をすることは効果的で大きな力がありますから。仕事のメンターを見つけたり、社内でより深い人間関係を築いたりするのに最適な方法だと思います。
とはいえ、好きな場所で好きなように働く、より柔軟な働き方にも大きな力があることもわかっています。Boxでは、このハイブリッドなアプローチを進めていきたいと思います。