そんな唯一無二の作品は、どのようにして生まれるのだろうか。岡﨑によると、デザイン画は描かず、手を動かしながら思うままに造形していく。こうした一連の制作行為自体が「祈り」につながるのだという。
本記事では、この「祈り」という行為について、岡﨑のルーツを探りながら紐解いていく。
原点は厳島神社の大鳥居
岡﨑は1995年、世界文化遺産の「宮島」を有する広島県廿日市市に生まれ、高校時代までを過ごした。「幼少期は厳島神社の大鳥居を眺めながら、対岸で釣りを楽しんでいました」と振り返るように、豊かな自然に囲まれ、神道やアニミズムがいつも身近にある環境だった。
昔から特に大鳥居はお気に入りで、幼稚園時代にはダンボール工作で再現したという。岡﨑の作品にシンメトリーが多いのは、こうした幼少期の経験にも由来する。
「大鳥居は秩序だっていて、意志を感じるんです。強い意志を持つものはシンメトリーになっている、という考えから作品にも取り入れています。シンメトリーにすることで、宇宙にもつながるような、人を惹きつける印象になります」
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子どものころから絵や立体造形が好きだった岡﨑。中高生時代にはファッションにも興味が湧き、ファッションデザイナーに憧れを抱くようになる。そこで広島を離れて、東京藝術大学デザイン科に進学する。
上京して驚いたことがあった。初めて東京で迎えた8月6日、広島では毎年当たり前に感じてきた「空気感」がなかったのだ。人々の平和への想いや祈りがつくりだす空気感だ。
そのとき、自身がその「祈りの空気」を大切に持ち続けていることに気づき、“祈り”が作品のテーマになった。そして「祈りとは何か」を根源的なところまで突きつめたどり着いたのが、「作品の制作行為そのものが“祈り”である」という考え方だった。