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2022.10.15

メディア初露出、「ワインの卵」はなぜ美味か?

田辺養鶏場の忍野たまごを使っただし巻き卵

「ワインパミス」という成分をご存じだろうか。

ワインパミスとは、主にワインを醸造する過程で生じる、ブドウを絞った後に残る皮や種のことだ。家畜の餌などに利用される例もあるが、廃棄されることがほとんどで、その量は年間10000トン近くにもなるという。

ワインパミスは、ワイン同様、健康に効果的とされるポリフェノールを豊富に含んでいる。また、ブドウの皮に含まれるオレアノール酸という成分は、ワインには含まれておらず、ワインパミスならではである。オレアノール酸は他にもオリーブやシソなどに含まれており、健康を意識している人にはぜひとってほしい成分だ。

そんなポリフェノール(とりわけ後述の「レスベラトロール」)と、ワインでは摂れないオレアノール。2つの夢の成分を含むワインパミスの可能性に注目する企業の中でも、本稿ではとくに、山梨県の山中湖の麓に位置する新興企業「富士パミス」、「田辺養鶏場」に注目した。

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Morsa Images / Getty Images

「食べるワイン」とは


「富士パミス」は、「ワインパミスを通じて、地域の力を再発見する」ことをモットーに、2022年8月に創業された。同社取締役を務める吉野勝氏によれば、同社のワインパミスペースト「PureeWine」は搾り立てパミスを使用し、ほぼウェットな状態のまま製品化する。原材料の仕入れ先は全国のワイナリーだ。各産地ごと、ワイナリーごとの性質を知るため、テスト生産の目的も兼ねてさまざまなワイナリーと提携しているという。

吉野氏は、ワインパミスからエキスを抽出し、ペーストにする特許を取得。粉末のパミスをペースト、パウダー、パテ状にし、食品原料に利用する発酵調味料として販売している。「食べるワイン」として、様々な用途で使用可能だという。

例えば、湿ってしまうのでワインを直接は使えないパンや麺類に対しても、調味料としてのワインペーストなら利用できる。また、イタリアンだけでなく、日本料理の煮物、和え物、カレーや肉の漬け込みにまで用途は多岐に渡る。肉料理では、ワインペーストを使うことで臭みが除かれ、肉質が柔らかくなるという。

このワインペーストは富士パミスの社屋で販売されている。他にも、ワインペーストを使用したワインジャム、焼き肉のタレなども販売されている。
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取材・構成=石井節子 協力=伏見比那子

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