経営・戦略

2024.05.15 11:00

【バフェットが株主総会で語ったこと1】消費者心理とアップル

安井克至
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Drew Angerer/Getty Images

バリュー投資家はウォーレン・バフェットを崇拝している。しかし、彼の驚くべき投資成功は、経済的な「掘り出し物」を探し出す能力と同様に、消費者行動に対する鋭い理解から生じている。

バフェットは国宝のような存在だ。彼が指揮を執る投資会社バークシャー・ハサウェイは、1965年以来、S&P500のリターンである10.2%に対し、19.8%の年複利リターンを実現し、その結果、同期間のS&P500と比べて140倍のリターンをもたらした。バフェットは世界で6番目に裕福な人物で、個人の純資産は1330億ドル(約21兆円)となる。そして、その巨額の資産は、彼の死後に慈善活動に充てられることがすでに決定されている。バフェットは、株主に向けた手紙やバークシャーの株主総会で投資や人生についての考えを投資家たちに伝え、その言葉は即座に彼らの胸に刻まれてきた。

バフェットが「オマハの賢人(訳注:ネブラスカ州オマハは、バークシャーの本拠地であり、バフェットの生まれ故郷。彼は現在もオマハに在住している)」と呼ばれるようになったのは、株式投資や企業経営をとてもわかりやすい言葉で説明してきたからだ。バフェットの投資哲学は、気に入ったビジネスを見つけ、それを購入し、理想的にはそれを永遠に持ち続けることである。

先日開催されたバークシャーの年次株主総会は、昨年11月にチャーリー・マンガー副会長が99歳で他界して以来、93歳のバフェットにとって初めての株主総会となった。バフェットは明らかに、今は亡き友と一緒にいることを恋しがっていた。ある時、ユタ州の発電に関する質問に答え終わった後、バフェットはこれまでの癖で、左を向き、「チャーリー、何か補足は?」と言った。だが、そこにマンガーはいなかった。その椅子には、バフェットの後継者として指名された、バークシャー・ハサウェイ・エナジーの会長兼CEOで、2018年からは保険以外の事業を担当する副会長のグレッグ・エイベルが座っていた。

フォーブスは1969年11月、バフェットを取り上げた記事『How Omaha Beats Wall Street (オマハがどのようにしてウォールストリートを打ち負かしたのか)』を公開して以来、長きに渡りバフェットの魔術師ぶりを報じてきた。当時、彼が運営する投資組合のバフェット・パートナーシップの運用資産は1億ドル(約155億円)だった。今日、バークシャー・ハサウェイの資産は1兆ドル(約155兆円)を超えている。

バフェットの包括的な戦略は、長年にわたって進化してきた。バフェットは、グレアムとドッドが提唱したバーゲン株の投資家としてキャリアをスタートさせたが、最近では、不朽のビジネスをリーズナブルな価格で所有することで大成功を収めている。バークシャーの有名な投資先として、コカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス、アップルなどがあり、保険会社のガイコのように100%の持分を所有する企業も多数ある。こうした優れた企業がバークシャーの60年にわたる成功の原動力となっているのだ。
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翻訳=江津拓哉

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