UNDER 30

2024.05.02 11:00

欧州版「30 UNDER 30」2024、小売とEコマース部門の受賞者たち

安井克至

Alejandro Benlloch and Bruno Casanovas wear sweaters from their own collection, Nude Project. (LEVON BISS FOR FORBES)

テイラー・スウィフトをはじめとするアーティストたちは、世界ツアーやマーチャンダイズで記録的な収益を上げ、ファンに家庭や劇場でもコンサート体験を提供するなど、音楽業界における成功を再定義している。同様に、Eコマースの分野でも起業家たちが小売のあり方を再構築している。

スペイン発のストリートウェアラインであるNude Project(ヌード・プロジェクト)がその良い例だ。創業者のAlejandro Benlloch(アレハンドロ・ベンロック)とBruno Casanovas(ブルーノ・カサノバス)は、「by artists, for artists(アーティストによる、アーティストのための)」というスローガンを掲げて、2019年に同社を設立した。現在23歳の2人は、500種類の衣服とアクセサリーを手がけ、200カ国以上でオンライン販売を展開し、スペインとイタリア、ポルトガルにリアル店舗を構えている。2人は、自分たちと同世代のユーザーが求める服を作るだけでなく、ポップアップイベントの開催や自社ブランドのビールの販売、コーヒー・ショップの運営まで事業を拡大している。

「コミュニティとつながり、エクスペリエンスを提供することから成功は生まれる」と同社の共同CEOのカサノバスは述べている。彼によると、ヌード・プロジェクトのブランド哲学は、「Z世代が共感するアパレルとライフスタイルを創造すること」だという。その言葉とおり、同社は多くのユーザーの共感を得ており、2023年の売上は3000万ドル(約46億円)に達した。

彼らのような革新的でリスクを恐れない考え方は、今年のフォーブスの欧州版「30 UNDER 30」の小売・Eコマース部門に選出された起業家たちに共通している。彼らは、新しいビジネスモデルを拡大し、化粧品やメガネ、ペットフードから、古着やサプリメントに至るまでさまざまな商品をグローバルに出荷して多額の資金を調達したり、大きな収益を上げたりしている。

今年の受賞者に共通するのは、サステナビリティをビジネスモデルの中核に据え、事業拡大に成功している点だ。アントワープ大学出身の28歳のManush Bavar(マヌーシュ・バヴァー)らが設立した使い捨てプラスチックの排除を目指すスタートアップBrauzz(ブラウズ)は、洗濯用洗剤や石鹸向けの詰め替えボトルの販売で2023年に350万ドルを稼いだ。また、28歳のTibbe Verschaffel(ティッベ・ヴェルシャフェル)が設立した、ベルギーに本拠を置くPlanet B(プラネットB)は、竹製のストローや固形シャンプーといったプラスチックを排除した製品を販売し、2024年に1070万ドルの売上を見込んでいる。
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編集=上田裕資

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