暗号資産

2024.04.30 13:00

「クリプトの冬」を乗り越えた暗号資産投資サービスAbraの戦略

木村拓哉

Bill Barhydt, founder and CEO of Abra(Photo by Riccardo Savi/Getty Images for Concordia Summit)

2022年に暗号資産業界を襲った大規模なメルトダウンでは、Celsius(セルシウス)やVoyager(ボイジャー)、BlockFi(ブロックファイ)などの個人投資家向けのレンディングプラットフォームが一掃された。これらの企業は、伝統的なライセンスを持たずに運営される疑似銀行として自らを宣伝し、投資家に数十億の損失をもたらした。

シリコンバレーの暗号資産投資プラットフォームで、最盛期に10億ドル(約1566億円)以上の暗号資産を運用していたAbra(アブラ)は、この苦境を乗り切り、現在は主に機関投資家や富裕層の個人向けの投資会社として再スタートを切っている。

昨年夏に当局がクリプト(暗号資産)企業の利子付き口座を規制し始めたことを受けて、アブラは米国でのリテール(一般個人投資家)向けの事業を閉鎖した。同社はAbra Boost(アブラ・ブースト)とAbra Earn(アブラ・アーン)のプログラムを通じて、暗号資産を預ける投資家向けに10%という高い利子を宣伝していた。2023年6月、テキサス州証券委員会は、アブラとそのCEOであるビル・バーハイトが証券詐欺を行い、「著しく誤解を招くような、または公衆を欺く可能性のある」発言を行ったとして提訴した。

また、少なくとも他の4つの州(オレゴン州、サウスカロライナ州、アイオワ州、ニューメキシコ州)が、アブラ・ブーストとアブラ・アーンが証券規制に違反しているとして、同社に排除命令を出した。アブラは今年に入りこれらの訴訟で和解しており、フォーブスは、これらの州の同社の顧客が資金を取り戻しつつあることを確認している。

アブラの刷新されたプラットフォームは現在、裕福な個人(プライベートクライアント)やファミリーオフィス、ヘッジファンド、その他の機関投資家をターゲットにしている。米証券取引委員会(SEC)は2月に、同社の子会社のAbra Capital Management(アブラ・キャピタル・マネジメント)を登録投資顧問(RIA)として認可した。バーハイトによると、同社は現物およびオプションのOTC取引、借入、貸出、ステーキング、イールド、資産管理サービスなどで約4億5000万ドル(約700億円)の資産を運用している。

アブラは現在、顧客が資産の所有権を保持し、オンチェーンで独自に検証できるSeparately Managed Account(SMA)と呼ばれる個別管理口座モデルを採用している。「当社は、顧客が資産にアクセスする方法を大幅に改善し、融資システムに内在していたサードパーティやカウンターパーティのリスクを取らなくてもいいようにしたのです」とバーハイドは語る。
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編集=上田裕資

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