スタートアップ

2024.05.02 14:15

AIが次世代のパーソナライズド・ソフトウェアを生み出す

縄田 陽介
2146
この未来の実現には、複数の要素が組み合わさる必要があります。具体的には、データポータビリティの向上に必要な技術やユーザーインターフェースの進化、大量のデータを管理・保有している既存企業に対する規制圧力、そしてデータの使い道を知った上でそれを求める消費者からの需要です。

ここにAIが加われば、以前は自分のデータにアクセスできても良い使い道がなくて持て余していたのが、効果的に活用できるようになります。それに対応したアプリの数も飛躍的に増加していくでしょう。

例えば私たちの日々のメールや、ウェブの閲覧、検索、スワイプ、取引などで蓄積されたデータを、自分専用の学習モデルに訓練させることができればどうなるか想像してみてください。ユーザーの最新情報を常に把握した状態のアプリが、楽しさや実用性、あるいはその両方を桁違いの速さで提供できるようになるかもしれないのです。

ここ数年のAIを活用したアプリの台頭は、このデータの収集や利活用に対する考え方がすでに大きく変わってきていることを示しています。Web 2.0の「広く浅く」というアプローチとは対照的に、これからは「深さ」を追求し、より日常的で、より楽しいインタラクションを通じてデータを収集する時代なのです。「コールドスタート問題」も、今後はソーシャルグラフではなく、データにより解決するものになるでしょう。

この変化をここ最近で最も浮き彫りにしているのが、FacebookとTikTokの対照的なアプローチです。アプリ開発のトレンドとしても、これからは単に利用者数を増やすことよりも、ユーザーの日常に寄り添った、より深い体験やエンゲージメントが追求されるようになるでしょう。

Coral Capitalでは、段階的な改善よりも、飛躍的な進歩につながる機会への投資を常に重視してきました。パーソナライズドAIアプリの時代も、まさにそのような機会です。しかもその進歩はテクノロジーだけに留まらず、消費者とデジタルサービスのインタラクションそのものを再定義することになるでしょう。

この未来を形作るスタートアップへの投資において、私たちが重視するポイントは明確です。ユーザーのニーズを深く理解し、データ統合における革新的なアプローチを追求していること、そしてユーザーデータのプライバシーやポータビリティを取り巻く環境の変化に先駆けて対応できるスタートアップを、今後も積極的に発掘して参ります。

連載:VCのインサイト
過去記事はこちら>>

文=James Riney

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事