川島高之 三井物産ロジスティクス・パートナーズ代表取締役社長 [CEO’s LIFE]

三井物産ロジスティクス・パートナーズ代表取締役社長、川島高之氏。(フォーブスジャパン10月号より)



子育ても経営も自ら「決めさせる」

「私生活の充実こそが、仕事の効率化につながる」社員の子育てを支える「イクボス」として「職場革命」を実現した川島高之社長の時間の使い方とは。

―毎朝5時起床で家族の朝食と息子さんのお弁当を作られているそうですね。

人生の中で「子育て」という貴重な機会を与えられたのですから、それを権利として享受したいと思っています。弁当作りは、楽しみというより「義務」の面が大きいですが、6年間毎朝続けています。休日も、弁当・朝食作りは休めないため、5時半起きです。高校3年生になる息子の食欲は化け物さながらです。1リットルのタッパー入りご飯と、同じ量のおかずをぺろりと平らげて帰ってきます。

一方、「権利」として楽しんだのは息子との共通の趣味、野球です。少年野球チームのコーチも務めました。子育てを通して、PTAや地域の活動にも積極的に参加するようになり、会社にいるだけではわからない、世の中のひずみや問題点、組織のあり方なども見えてきました。

―しかし、一般的に考えて、経営業と父親業の両立は難しいと思いますが。

労働時間を70%にするならば、150%の成果を出さないと、会社にも認めてもらえないでしょう。仕事と生活時間のメリハリをつけるコツは、「権利主張の前に職責を果たす」「9回裏二死満塁の集中力で仕事に取り組む」「先送りしない」「リスクを取る」「すべてにデッドラインを設ける」。これを満たす集中力で仕事をすると、18時にはフラフラです。夜や週末は家族と過ごしたり社会活動に充てるなど、仕事とは関係のないことに使います。すると、翌朝(翌週)はまた仕事がしたいという意欲が湧いてきます。

―部下の子育てを支援する上司「イクボス」としても活動されています。

子育ても経営も「子ども/部下を信じ、裁量権を与える」ということが大切です。私は若い頃、子育てのために早く仕事を終わらせなければならず、客先へ行っても、課題を社には持ち帰らず、自分自身の判断で決定し、リスクを取るようにしてきました。もちろん失敗もありましたが、そうすることで判断力が身に付き、客先からの信用も得ることができました。

部下には、「自分で決める」能力を高めるように言っています。そうすることで、社員も成長し、仕事への意欲も高まる。いい意味で上司も手抜きができるようになる。成果は数字にも表れています。社員の労働時間は15%削減しているにもかかわらず、増収増益が続き、3年前より利益が8割アップし、株価は同業他社を20%近く上回っています。

―そういった方針・考え方の原点は?

私は小学生の頃、野球チームを作り自ら監督も務めました。大人の監督やコーチが誰もいない子どもばかりのチームで自ら練習メニューを作り、作戦を考え、地区大会に出て優勝したことがあります。子どものチカラを侮ってはいけません。その記憶と経験が大きいと思います。

―社長業と父親業は基本原則が同じ?

そうですね。やりがい、楽しさといったポジティブな面が半分、重い責任が半分あるという意味で。「長」という立場はその両面があるからこそエキサイティングなのだと思います。もっとも我が家では、妻の方が長として君臨しているんですけどね(笑)

辻本 力 = 構成 yOU(河崎夕子) = 写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.15 2015年10月号(2015/08/25 発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事