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2014.11.21

若きカジノ王「世界娯楽帝国」への道




オーストラリア第2の富豪、ジェームズ・パッカー。「金持ちの道楽息子」のイメージを覆し、「カジノ王」となった男は、 ハリウッド映画の製作にまで乗り出した。あの『ゼロ・グラビティ』の製作にも名を連ねるパッカーの素顔とは。

 (中略)ジェームズ・パッカーは、1980年代にオーストラリアでメディア王として名を馳せ、2005年にこの世を去ったケリー・パッカーの息子。若い頃は世界中で派手に遊び回っていたため、その頃と変わらぬ「お遊び旅行」のように見えるが、今回は完全にビジネス一色の旅だった。

損失額26億ドルからの「一発逆転」
(中略)彼にとってラッキーだったのは以前から投資していたマカオのカジノ事業が今やラスベガスの7倍の収益を上げていたということだ。クラウンがマカオに出資した6億ドルが今や80億ドルまでになっており、これは過去の失敗を取り戻すには十分な額だ。

「マカオの事業が一番利益を上げている。おそらくオーストラリア国内の利益を上回るだろう」と、パッカーは言う。彼が経営する非上場企業コンソリデーティッド・プレス・ホールディングスはクラウン・リゾーツ(クラウン)の50%を超える株式を保有している。
そのクラウンは昨年、時価総額を30億ドルから110億ドルに急増させて優良株のひとつに数えられている。市場を大いに沸かせた話題は、クラウンがローレンス・ホー(マカオのカジノ王スタンレー・ホーの息子)がCEOを務めるメルコ・インターナショナルとの合弁事業メルコ・クラウン・エンターテインメント(メルコ・クラウン)の株式33.7%を取得したことだ。(中略)

「カジノと映画はよく似ている」
こうしてマカオ進出の足がかりをつかんだパッカーはローレンス・ホーとともに2015年半ばには3番目のカジノをオープンする予定だ。また、20年の東京オリンピック開催決定を 受けたカジノ合法化を見据えて、日本進出も視野に入れている。メルコとの合弁事業に加えて、クラウンはメルボルン、パース、ロンドンでもカジノを運営しており、シドニーとスリランカのコロンボでは巨大カジノリゾート建設計画の承認を得ている。 パッカーが「カジノ」で大当たりしたことは、なんとも皮肉なことのように思えてならない。なぜなら、父ケリーは、世界各地のカジノでブラックジャックやポーカー、バカラなどに何百万ドルもの大金を賭けた伝説のギャンブラーだったから。(中略)

ワーナーに続き、ラットパックは12月にブラッド・ピットの製作会社プランB・エンターテインメントと3年契約を結び、プランBの映画製作に資金協力することになった。さらに、キャメロン・クロウ、ウォーレン・ベイティ、デビッド・フィンチャー、ロマン・ポランスキーなど、有名監督の作品にも出資する予定だ。
ラットパックのメディア拡大戦略の中身は、少なくとも1社のテレビ制作会社の買収、ネットフリックス(オンラインの映像配信会社)で配信するドキュメンタリー制作、ある人気作家の次回作の出版などだ。
ある意味、これはメディア王と呼ばれた父が残したメディア事業への回帰かもしれない。もちろん、「21世紀型モデル」でだが—。

ルシンダ・シュミット、ドロシー・ポメラッツ

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