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2014.11.20

格差問題で揺れる「スーパーリッチ」の世界




富裕層の中から台頭してきた所得上位0.1%のスーパーリッチが、 実は国際社会に大きな地殻変動を起こしている。 何がスーパーリッチを生んだのか。その生態を緊急報告する。

「世界で最も裕福な上位85人は、この街を走る二階建てバス1台に乗れてしまう程度の人数です。ところが、その彼らの資産は世界人口の貧しい部類に入る35億人の総資産に匹敵します」
今年の5月末、イギリスの首都ロンドンで行われた「カンファレンス・オン・インクルーシブ・キャピタリズム(包括的資 本主義に関する会議)」の席上で、IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、貧富の格差についてそう喩えてみせた。(中略)

「現在の世界は、富裕層に富が集中し、中間層の所得は伸び悩み、失業率の回復が難しいという状況に陥っています。 そして、富裕層の中から『スーパーリッチ』と呼ばれる超富裕層が生まれています」
そう語るのは、世界の富裕層を取材してきた経済ジャーナリストのクリスティア・フリーランドだ。『グローバル・スーパ ーリッチ―超格差の時代』(邦訳:早川書房刊)などの著書がある彼女は、1990年代のオリガルヒ(新興財閥)の台頭をモスクワで、2000年代のウォール街の活況をニューヨークで、それぞれ直に見てきた。
こうした「スーパーリッチ」が台頭した背景には、大きく3つの要因があると彼女は指摘する。(中略)
2つ目は「テクノロジー革命」だ。インターネットが普及した今、起業家はアイデアをすばやくモノやサービスにすることでグローバル市場で優位に立てるようになった。実際、グーグルのラリー・ペイジとサーゲイ・ブリン、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグのような世界的な起業家のほかにも、無数のIT富豪が次々と誕生している。「特に、『アルファ・ギーク』と呼ばれる数学やテクノロジーに精通し、リスクを取ることを恐れない人々が瞬く間にスーパーリッチになっています」(中略)

「トライブ化」 する富裕層と新たな階級対立
そうしたスーパーリッチの生態には2つの特徴が見られる、とフリーランドは語る。まず、彼らが主として、「IT業界」や「金融業界」、ロシアや中国、インド、中南米諸国といった「新興市場」、そして天然資源などの「コモディティ市場」に現れている点である。新興市場の場合、スーパーリッチが民営化、あるいは共産主義国家が市場を開放した際に、シェアを大きく伸ばすことに成功したからである。天然資源の場合は、グローバリゼーションにより世界の市場が広がったことで、コモディティ価格が上昇しているためだ。
次に、彼らは富豪同士でつながり、「コミュニティ」を築くようになっている。「彼らは国境を越えて、『トライブ(部族)』化しています。彼らは日常的に商取引をし、同じ業界の会議に参加し、海外で同じホテルに泊まっています。 ふだん会うことの少ない同胞よりも連帯感が強まりやすいのです」(中略)

しかし、富裕層が格差問題に対して無関心を装ったり、否定することを疑問視する声が富豪たち自身からも上がっている。投資家のジョージ・ソロスは「私は富裕層にとっては裏 切り者」と言いつつ、富の再配分をことあるごとに訴えてきた。ウォール街占拠運動で批判の対象になった投資銀行ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOでさえ、「収入格差は経済を不安定にする」と認めている。

 冒頭の会議も「資本主義を資本主義の手から助け出す」(ポルマンCEO)ことを目的に開かれた。持続可能な資本主義を維持するためにも、世界的に上位1%に集中してきた富を再分配する必要性が認識され始めているのだ。(以下略、)

フォーブス ジャパン編集部

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