宇宙で熟成したウィスキーの味は? サントリーも実験中 

3DSculptor / Bigstock


2011年、ウィスキー醸造のアードベッグ社はスコッチウィスキーのサンプルを国際宇宙ステーション(ISS)に送った。これは「宇宙空間でスコッチを熟成させると、マイクログラビティー(ほぼ無重力の状態)が味にどんな影響を与えるのか」という科学的疑問に答えるためだ。

実験では、ウィスキー蒸留液(蒸留器から取り出した直後の熟成を待つウィスキー)を、予めMixStixと呼ばれる液体ミックスコンテナに入れたオーク材の削りくずに加えた。MixStixは、ISSで液体を伴う実験を安全に行う目的でNanoracks社 が開発した製品だ。

ISSに送ったものと同じサンプルが比較参照データとして地球上に残された。それから3年後にISSのサンプルは研究のため地球に送り返され、アードベッグ社によるウィスキーの分析結果が発表された。

その分析結果で注目すべき点は、ウイスキーの種類によってフレーバーに変化が見られたということだ。

「マイクログラビティーが木くずからの抽出液に影響するのは明白だが、宇宙空間ではサンプルによって違う効果が出る。ISSのサンプルでは、抽出可能な化合物と、抽出段階に到達していない化合物の間に大きくかけ離れた比率が見られた」と、アードベッグ社のビル・ラムズデン博士は述べた。

では、宇宙で熟成したウィスキーはどんな味だったのだろう。ラムズデン博士は、公開された動画で次のように話した。
「地上で管理されたサンプルは、確かに誰もが愛するあの『アードベッグ』の味でした。しかし、宇宙で熟成したサンプルはまったく新しい別のものだったのです。 中には今まで味わったことのないようなフレーバーも存在していました」

さらに白書では、地球上のサンプルとISSのサンプルのフレーバーの違いは明白で、テスト参加者は容易にその違いを指摘することが出来たと述べられている。アードベッグ社によると、宇宙空間で熟成させたウィスキーの味を「非常にフォーカスされたフレーバー。スモークされたフルーツや、ピートの土っぽい香り、ペパーミント、アニスシード、シナモンなどの香りが強く刺激的な余韻を残す」としている。

アードベッグ社では今後、宇宙空間でのスコッチウィスキー熟成をさらに研究していく予定だ。

現在こうした試みを行っているのはアードベッグ社だけではない。7月には日本の酒造メーカー最大手の一つであるサントリーが、「円熟」のプロセスを明らかにするため、宇宙空間へ「響」や「山崎」などのウィスキーを送り込んでいる。

文=アレックス・ナップ(Forbes)/編集=上田裕資

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