ビジネス

2015.09.11

グーグルの中国復帰は“妥協の産物” 「検閲もやむ無し」の姿勢

Photo by ChinaFotoPress/Getty Images


9月4日、グーグルが中国本土にWebサービスのプロバイダとして戻る日も近いとThe Informationが報道した。同社は今秋にもアプリ販売マーケットのPlay Storeを中国で立ち上げるという。

記事によると「Play Storeを中国本土で立ち上げた後は、現地企業との提携を念頭に置いている」とのこと。グーグルはさらに、モバイル端末向けOS、Android Wearの中国展開を計画中という。

グーグルと中国の関係は愛憎半ばしている。中国はグーグルの検索結果を検閲している。2010年にグーグルは中国から撤退した。その後、同社に対する大規模なサイバー攻撃が発生し、グーグルはそれが中国政府によるものだと主張した。

しかし、グーグルの中国復帰への野望は明らかだ。今年2月、グーグル現CEOのサンダー・ピチャイはフォーブスの取材に対し、その思いを述べていた。

「中国は世界最大のマーケットの1つだ。Androidは中国で多くのイノベーションを産んできた。中国とは過去に問題を抱えてきたが、未来には希望がある。中国ではAndroidが広範囲で活用されており、中国人ユーザらにサービスを提供したいと考える。中国は決してブラックホールなんかでは無い。我々は中国向けにサービスを提供できる機会を探したい」とピチャイはフォーブスに語っていた。

それ以降、グーグルは中国復帰への道を模索してきた。しかし、中国内の情報筋も「具体的な時期は誰にも分からない」と話している。決定権は結局のところ、中国政府側にある。2月の時点でピチャイは「時期の決定権はグーグルのコントロール下には無い」と答えていた。

グーグルは中国復帰にあたり、ある程度の妥協はやむ無しと考えている節がある。同社は「中国の検閲に屈した」と批判されることを覚悟しながら、同時に、少しでも検閲が軽減されることを望んでいる。Play Storeをオープンしても、政府が異議を唱えるニュースやアプリは存在しないだろう。

しかし、グーグル関係者はPlay Storeはグーグルの検索サービスとは別物だと考えている。アプリストアに何を掲載するかの決定権は、従来からグーグルの管理下にあったし、中国進出にあたり、どのアプリが許容され、どのアプリが許容できないかについては、グーグル側としても飲めない条件ではないと考えている。

中国大陸からの検索エンジン引き上げ後も、グーグルは中国での存在感を失っていない。同社は今もエンジニア・チームを現地に置いているし、営業部隊が中国企業の広告展開をサポートしている。グーグルはまた、同社のモバイル広告ネットワークを通じ、中国企業のアプリのマネタイズを支援している。

文=ミゲル・ヘルフト(Forbes)/ 編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事