注目は海外大学と実業系大学? 「出身校ランキング」から読み解く未来の社長像




どの大学を卒業するのが、社長への早道となるのか?
毎年注目を集める「社長の出身大学ランキング」の結果と大きく異なったが、本誌の「日本のトップの出身大学ランキング」との間には共通点があった。


帝国データバンクが毎年発表する「全国社長分析」の「社長の出身大学上位50校」が今年も発表された。これは約145万社のデータが収録された「COSMOS2」から「株式会社」「有限会社」計114万4,167社のデータを基に集計されたランキングである。

1位の「日本大学」は不動のトップ。2位以下も「慶應義塾大学」「早稲田大学」「明治大学」「中央大学」「法政大学」……と、順位の変動は少なく、卒業者数自体が多い“メガ大学”出身者が上位を占める。しかし、ランキングをよく読むと、小さな「変化」が見て取れる。

上位大学が軒並み社長数を減らす中で大幅に社長数を増やしているのが、14位にランクアップした「外国の大学」出身社長。トップ50にランクされたどの大学と比べてもダントツの290人増となっている。

また、「京都産業大学(25位)」「東京農業大学(29位)」「大阪経済大学(38位)」「九州産業大学(45位)」など、専門性を打ち出している大学の多くが前年比で社長数を増やしていることにも気づくはずだ。

実は、この調査レポートの今回最大のトピックスは、「社長交代率」が、低水準ながらも2年連続で上昇していることだった。つまり、事業承継により「著名総合大学」出身の社長が退陣し、「外国の大学」や「実業性をもった大学」出身の社長がその跡を引き継いでいる傾向がある。社長像は少しずつだが変わりつつあるのだ。


社長になる分岐点はどこか?

この春には、東京商工リサーチが「社長の住む街」調査を発表したが、ここにも変わりつつある「社長の姿」が見て取れる。

同社が保有する全国267万人の代表者データ(個人企業も含む)から集計された同社調査によると、社長の住む街ランキングは昨年と同じく、1位は「東京都港区赤坂」、2位は「東京都渋谷区代々木」だが、3位以下に大きな変動があった。「東京都新宿区西新宿」が9位から3位に急上昇したほか、「江東区大島」「江東区亀戸」がベストテンに登場。

そして、最も世間が驚いたのが、上位の常連だった「大田区田園調布」が6位から18位に、「世田谷区成城」が7位から13位に急落したことだ。これは多くのマスコミが取り上げ記事になった。

こうしたデータが示すのは、これまでの社長像が変わりつつあるという事実である。

「日本のトップの出身大学」は、これまで本誌が行った「日本を動かす経営者BEST100」「日本の長者番付トップ50」「日本を救う起業家BEST10」「イノベーション女子」でランクインした「成功者」の経歴を調査した結果である(回答を得られなかった「成功者」の出身大学については、公式発表がされていればそれをカウントした)。全国調査版のランキングと比較すると違いは一目瞭然だ。

帝国データバンクの全国版1位の「日本大学」出身社長は2人で16位、全国版では21位の「東京大学」が本誌調査では1位となった。また、全国版調査では調査外だが、「大学院」出身社長が12人で3位、全国版では31位の「京都大学」が本誌調査では5位と上位にランクされた。だからといって、成功者には高学歴が必要と短絡してはならないデータもある。「高卒」社長が6人(6位)、「大学中退」社長が3人(12位)だったことも、本誌調査の大きな特徴だった。

全国版で最も増加数が顕著だった「外国の大学」出身社長は、本誌でも6人(6位)。特に独立起業した社長に海外組が多かったのは、今後の社長像を占う材料となるかもしれない。

今回の調査で協力してくれた、ある企業ではいったん公立小中学校卒業という学歴で回答してくれたのだが、「やはり、小中学校の学歴は非公開にしてください」と訂正を申し出てきた。「非常にプライベートなことでもありますし、現在の職務に小中学校の学歴が与えた影響はほとんどないとも考えられるので」という理由だった。

この報告を受けて本誌取材チームでは「いったい彼らはどの段階で社長になることを意識するのか」という話題になった。

取締役になったときに父親から「社長になる可能性もあるのだから勉強しろ」と言われて初めて意識したというのはアサヒグループホールディングスの泉谷直木社長。

かつての同僚から「人生一度きりなのだから好きなことをやる」と告げられたとき、起業への意志を強くしたというOrigamiの康井義貴CEO。

親の会社の外で働いていたが、呼び戻されて社長になる覚悟をしたという大塚商会の大塚裕司社長。

学歴はさまざまだが、成功者たちに共通するのは、社長になるには「覚悟」「勇気」が不可欠だということか。


※本誌(フォーブスジャパン10月号)には「日本のトップの出身大学」「社長の出身大学上位50校(2014年)」の全ランキングを記載。

鈴木裕也(フォーブスジャパン編集部) = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.15 2015年10月号(2015/08/25 発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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