グーグルの新CEOサンダー・ピチャイ氏。すでにGoogle内での信頼もしっかりと得ているようだ。
(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)



グーグルの新CEOを務めるサンダー・ピチャイとはどういう人物なのか。現在43歳の彼は入社11年目。彼はインド南部の人口400万人の街、チェンナイで育った。母親は速記者として働き、父親は電気エンジニアで、部品の組み立て工場を経営していた。

一家の住まいは二間のアパートだった。弟と二人でリビングで寝ていた。ピチャイ家には自動車が無く、サンダーが12歳になるまで電話も無かった。学業優秀だったサンダーはインド工科大学でエンジニアリングを学び、奨学金を得てスタンフォード大学に進んだ。そこで博士号を取得し、研究者になるつもりだったが、途中でシリコンバレーの半導体メーカーApplied Materialsでエンジニアの職を得て大学をドロップアウトした。2002年にビジネススクールのウォートンに進み、MBAを取得。マッキンゼーでコンサルタント職を務めた後、2004年からグーグルでの仕事をはじめた。

グーグル入社後はまず、検索ツールバーを担当する小さなチームに所属した。グーグルが自社製ブラウザを開発するというアイデアはサンダーの発案だった。ペイジとブリンはそのプロジェクトに賛成したが、当時のCEOのエリック・シュミットは反対したと、ビジネスウィークは伝えている。シュミットはブラウザ・プロジェクトを高くつく厄介事だと考えたようだが、その後、Chromeは大成功を納め、今や世界の市場シェア45%を獲得している。

サンダーはまた、Chrome OSの開発にも貢献し、GmailやGoogle Drive、Google Mapsなどのコア事業を監督。2013年にはAndroid OSの責任者となり、モバイル限定だったAndroidをスマートウォッチやテレビ、自動車といった領域に拡大した。サンダーは低価格帯のスマートフォンを新興国市場へと広げたいと考えている。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、サンダーを入社当時から知るウェスリー・チャンのコメントを取り上げた。「彼はこの12年間で素晴らしい業績をあげ、現在の地位を築いた。彼は常に人々が望むものを立ち上げてきたんです」
サンダーは過去2年間、グーグルの開発者会議で同社の顔役を務め、カンファレンスでは司会進行役を務めた。

サンダーの存在は以前から広く業界の関心を集めていた。ツイッターは2011年当時、サンダーを引き抜こうとしていたとの報道もある。テッククランチは先月の記事で「ツイッターの新CEOになるかもしれない13人」のリストにサンダーを入れていた。また、サンダーの名はスティーブ・バルマー辞任後のマイクロソフトのCEO候補としても挙げられていた。FBRキャピタルのアナリスト、ウィリアム・バードは「経営陣はサンダーをグーグル社内に引き留めるために、彼を昇進させた」とMarketwatchの記事で推測している。

サンダーのリーダーシップとは、どのようなものなのだろう。報道によると、彼は控え目で、人々に共感を示し、支援を惜しまない態度で、難しい判断を行っていくタイプだという。サンダーは対立することを避け、協調の大切さを力説する。彼は常にチームのメンバー全員に、仕事の意義を理解させることを徹底する人物として知られる。グーグルの製品マネージャーだったミニー・インガーソルは「彼は常に人間関係を良好に保つ人です。彼のことを悪く言う人はいません」と、ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に答えている。

また、サンダーはラリー・ペイジの右腕的役割を果たしたことでも知られている。ビジネスインサイダーは、彼のスピード出世について、このようなエピソードを披露した。

ある日、部長達が社内の秘密プロジェクトについてミーティングをしていると、ペイジが割り込んできて、全く関係のない話をはじめ、そのまま部屋を去ってしまったことがあった。すると、サンダーが部屋に入ってきて、ペイジが何について話していたのかをみんなに説明した。「ペイジがモーゼだとすると、サンダーは(モーゼの兄の)アロンの役割なんだ」と関係者はコメントしている。この話はサンダーが「ペイジの考え」の代弁者であることを物語っている。

今後、サンダーは多くの課題に直面するだろう。スマートフォンユーザは今後、検索よりもアプリに多くの時間を割くようになる。この事はAmazonを後押しし、ユーザはより少ないステップで物を買うことができる。恐るべき競合であるFacebookも膨大なユーザーデータを持ち、グーグルよりも効率的にそれを活用するかもしれない。

しかし、サンダーは少なくともグーグル内部では無敵の存在だ。彼と8年間を過ごした同僚の一人はこう話している。
「サンダーを嫌いな人、またはサンダーが馬鹿だと考えるグーグル社員は一人もいませんよ」。フォーブスは昨年、サンダーの昇進に関する記事を、あるベンチャー・キャピタリストの言葉を引用して締めくくった。「最後に勝つのは人から好かれる人物なのです」

編集=上田裕資

 

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