米大統領選を支えるテクノロジー 決済サービス「Stripe」の実力

クリントン陣営はStripeに対し、6月30日までの3ヶ月に60万ドル以上の手数料を支払っている。<br />(Photo by Scott Olson/Getty Images)



2016年秋の米国大統領選挙までは、まだ一年以上の時間がある。しかし、ホワイトハウスを目指すスタートアップ業界では既に圧倒的な勝者が誕生している。

その勝者とは決済サービスのStripeだ。サンフランシスコを拠点とする同社は、寄付金集めのプラットフォームとして、大統領候補 の約半数に利用されている。連邦選挙委員会への届出書類を見ると、民主党ではヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースが、共和党ではマルコ・ルビオとランド・ポールらがStripeを選んでいる。Stripeは前四半期に8つの陣営から、総額80万ドル(約9900万円)の取引手数料を得ている。

「選挙戦においては、洗練されたコマースシステム、CRM、データ分析を構築し、それらを常時機能させなければならない。我々は候補者たちにその機能を提供している」と、Stripe社長のJohn Collisonは話す。Collisonは選挙戦のプロセスはスタートアップ企業の運営に似ていると言う。

候補者らがStripeを使用しているのは、大統領選挙をテクノロジーが変革したことの証と言える。最近の大統領候補者らはウェブサイトの運営にアマゾンのウェブサービス(AWS)を活用し、演説会場への移動にはUberやLyftなどの配車サービスを使う例もある。候補者らはStripeを使うことで、財務管理システムを構築する手間を省くことができ、彼らが得意とするカネ集めに専念することができるのだ。

Stripeが誕生したのは、2011年9月。「今回がStripeが重要な役割を果たす初めての大統領選です。我々のサービスは、これまで主に口コミで広まった。候補者の中には、上院議員選挙などでStripeを使ったことのある人もいます」とCollisonは言う。

Stripeを導入したヒラリー・クリントンの寄付サイトは、手続きが簡素で、セキュリティが保証され、繰り返し寄付を行う機能も備わっている。Stripeは寄付金の決済や支援者のクレジットカード情報の保存、寄付金の分配などを行う。

フォーブスの推計では、ヒラリー・クリントン陣営はStripeの決済システムを通じ2,000万ドル(約24億円)以上の寄付金を集めている。連邦選挙委員会への届出によると、クリントン陣営はStripeに対し、6月30日までの3ヶ月に62万3,087ドルの手数料を支払っている。これは、同期間におけるクリントン陣営の経費の中で5番目に多い金額だ。Stripeの取引手数料は、決済金額の2.9%+30セントだが、一ヶ月間の取引金額が8万ドルを超える場合、手数料はもっと安くなるとされている。フォーブスはクリントン陣営に対し、Stripeを使って集めた寄付金の額を尋ねたが、回答は得られなかった。

民主党だけでなく共和党の候補者たちもStripeを活用している。ランド・ポールは前四半期にStripeに10万2,371ドルを支払っており、同様の目的でPayPalに支払った3万4,396ドルを大きく上回っている。また、ジェブ・ブッシュは3万7,724ドルを、マルコ・ルビオは2,500ドル以上をStripeに支払っている。

Stripe社長のCollisonは、自身の会社が両政党の大統領選に深く関与しながら、自らは大統領選に対してポジションを取ることはない。弟でStripeのCEOであるPatrickと共にアイルランドからやって来た彼は米国の投票権を持っていない。見物人としてレースの行方を見守るだけだ。

Collisonは7月4日の米国独立記念日に投稿したツイートで「自分は人からよく、なぜアメリカに来たのかを尋ねられます」というメッセージを投稿している。そのツイートには前テキサス州知事で共和党候補のリック・ペリーが、アメリカ国旗の前で大型バイクにまたがる姿を写した写真が添付されていた。

文=ライアン・マック(Forbes)/ 翻訳編集=上田裕資

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