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2024.05.16 12:00

シングルボードPCの「Raspberry Pi」がIPOを正式発表

木村拓哉
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Photo by Olly Curtis/Future via Getty Images

1枚の回路基板上にコンピューターとして最低限の機能を持たせたシングルボードコンピュータで知られる英国企業のRaspberry Pi(ラズベリーパイ)は米国時間5月15日、ロンドン証券取引所での新規株式公開(IPO)を準備中だと発表した。

2011年の販売開始以来、累計6000万台以上のラズベリーパイを販売してきた同社の評価額は、最大5億ポンド(約980億円)に達する可能性があると、このニュースを最初に報じたサンデー・タイムズ紙は述べている。

ラズベリーパイCEOのエベン・アップトンは、株式公開の意向を発表する声明の中で、「2012年に最初の製品をリリースしたとき、私たちの目標は、若い人たちが自信を持って所有し、探求できるような手頃な価格のコンピュータを提供することでした。ラズベリーパイの特徴である低価格コンピューティングに対する我々のコミットメントは今後も変わりません」と述べている。

ソニーからの出資も受ける同社の製品は現在、世界70カ国以上で販売されているが、現状の販売台数は、より大きな投資を行えば達成可能な数字に比べれば、ごくわずかなものに過ぎないという。ラズベリーパイは、「2023年の獲得可能な市場規模は212億ドル(約3兆2000億円)」と推定しているが、実際の2023年の総売上高は、そのわずか1%程度の2億6580万ドル(約410億円)に過ぎなかった。そのため、同社は株式上場が「力強い成長軌道の維持と拡大のための大きなチャンスになる」と主張している。

ラズベリーパイはまた、自社の製品が環境に配慮したものである点をアピールしており、上場時にロンドン証券取引所のグリーン・エコノミー・マークを取得する予定だと述べている。同社のシングルボードコンピュータは、従来のデスクトップPCや組み込みPCに比べて、生産時に使用する水の量が90%少なく、筐体に使用するプラスチックの量も85%少ないという。

ラズベリーパイの最近のバージョンは、本格的なデスクトップのLinuxオペレーティングシステムを実行するのに十分なパワーを持つようになったが、一般的には、プログラミング学習やホームオートメーション用の安価なキットとして認知されている。

今回のIPOの発表は、同社がビジネス市場での収益拡大を目指していることを示唆している。ラズベリーパイは、自社の製品が「センシングやサイネージ、エッジコンピューティング、IoTゲートウェイでの使用など、幅広い産業用および組み込み用アプリケーションに適している」と述べている。

「ラズベリーパイは、産業用および組込み機器の顧客にサービスを提供するため、主要な製造パートナーであるソニーと協力し、引き続き製品の品質に注力していく予定です」と同社は述べている。

上場の時期は明かされていないが、早ければ来週になるとも報じられている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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