モビリティ

2024.05.15 12:30

いすゞ自動車、「自動運転トラック」の米ガティックに47億円出資

木村拓哉
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いすゞF-seriesをベースに、Gatikの自動運転システムを搭載した同社開発車両(いすゞプレスリリースより)

シリコンバレーを拠点とする物流分野に特化した自動運転テクノロジー企業、Gatik(ガティック)は米国時間5月14日、日本のいすゞ自動車との新たなパートナーシップで3000万ドル(約47億円)の出資を受け、レベル4の自動運転の商用化を目指すと発表した。

共同創業者兼CEOのゴータム・ナランはフォーブスの取材に対し、2027年に生産が開始される次世代トラックは、いすゞの新たな工場で製造され、そこにガティックの技術が統合されると語った。ガティックへのいすゞの累計出資額は、これで2億ドル(約312億円)を超えたとナランは述べている。同社の自動運転トラックは、人間の運転手なしで走行するのに十分なセンサーやソフトウェア、コンピューティング能力を搭載するレベル4の能力を持つとされている。

「トラックメーカーがレベル4の自動運転トラックの大量生産を約束したのは、我々が知る限りこれが初めてだ」とナランは述べている。「この提携は、当社の技術やそのユースケース、経済性を証明するもので、北米で2500億ドル(約39兆円)規模になるミドルマイル市場に占める、ガティックのポジションの大きさを示している」

フォーブスの人工知能(AI)分野の有力企業リスト「AI50」にも選出されたガティックは、アルファベット傘下のウェイモのように自動運転タクシーを開発するのではなく、ウォルマートやクローガーを含む小売大手のために、物流トラック向けの自動運転ソリューションを提供している。現状で約70台の同社の自動運転トラックの多くは、いすゞの車両を改良したもので、都市部を人間のドライバーを乗せずに最高時速45マイル(約70キロメートル)で走行し、高速道路をセーフティドライバーを同乗させて走行している。

ガティックの収益は伸びているとナランは、詳細を明かさずに語った。彼は、いすゞとの新たな提携によって同社が数百台規模のトラックを商用運転することになると予想しており、今後の数年以内の黒字化を目指している。「私たちは、いすゞの生産ラインから出荷される車両に最初にアクセスすることになる」と彼は語った。

苦境の自動運転分野

ガティックのこの提携は、自動運転分野の他の企業の苦境を考えると注目に値する。自動運転トラックのTuSimple(トゥーシンプル)は1月に米ナスダックでの上場を廃止し、同業のEmbark(エンバーク)も2023年に従業員の70%を削減した後にソフトウェア企業のApplied Intuition(アプライド・イントゥイション)に買収された。また、Nuro(ニューロ)のような宅配ロボットの企業も、商業運転の規模を拡大するのに苦労してレイオフを実施した。さらに、この分野のリーダーであるウェイモでさえ、ロボットタクシーのみに注力するために物流部門の計画を棚上げした。ゼネラルモーターズが支援するクルーズも、安全面の課題で苦戦している。

ナランは、顧客からの5年間のコミットメントで収益を上げ、いすゞとの提携を獲得したガティックのテクノロジーは、多くの競合他社と一線を画していると述べている。「自動運転分野の課題は、収益がまだ十分ではない点にある。私たちが重視しているのは、収益を上げつつ成長を遂げていくことだ」と彼は語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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