2024年版「若き」世界の億万長者たち、日本の佐上峻作社長もランクイン

マーク・マテシッツ(31歳、オーストリア)/396億ドル(約6.1兆円)Photo by Manfred Noger ATPImages/Getty Images

若くして億万長者になるのは稀な偉業である。億万長者の平均は66歳で、最高齢は102歳でありとても若くしてスーパーリッチと呼ばれる人は少数派だ。

今年、フォーブスの「世界長者番付」で最も若い25人は、全員が33歳以下だった。彼らの合計資産は1100億ドル(約17兆円)に達する。その中にはSnap(スナップ)、GymShark(ジムシャーク)、Oculus VR(オキュラスVR)のような有名企業を自らの手で築き上げた起業家もいる。

しかし、リストの大半は誰かの手を借りて億万長者になった人たちだ。2009年以来初めて、リストに載っている30歳未満の億万長者全員が、相続による財産で富を築いた。これは、一部の起業家が30代まで高齢化した結果であり、「偉大なる富の移転」が始まった兆候でもある。

世界で最も若い億万長者は、ブラジルのリヴィア・ヴォイトだ。まだ大学生で19歳の彼女は、亡き祖父が共同設立した電気機器メーカーWEGの少数株主であり、推定11億ドル(約1700億円)の資産を持っている。彼女と、姉のドーラ・ヴォイト・デ・アシス(26歳)は、今年から最年少億万長者リストにランクインした新顔のうちの2人だ。

今回のリストの中で、相続により資産を築いた億万長者は18人いる。その中にはインド系アイルランド人のミストリー兄弟がおり、彼らは、インドのコングロマリット企業タタ・サンズの株式により、1人当たり推定49億ドル(約7577億円)の資産を持つ。彼らは2022年に父サイラス・ミストリーが死去した後、タタの株式を相続した。父のサイラスが死去したのは、インドで尊敬を集める名経営者の祖父パロンジ・ミストリーが死去した3カ月後のことであった。

父親の死が原因で、過去3年間にこのリストに加わった若い億万長者は彼らだけではない。イタリアのクレメンテ・デル・ヴェッキオ(19歳)は、2022年に父レオナルド・デル・ヴェッキオが亡くなった後、レイバンなどのブランドを展開する眼鏡メーカー、エシロール・ルックスオティカの株式を相続した。リストにも登場し、彼の兄弟であるレオナルド(28歳)とルカ(22歳)もまた、他の3人の兄弟とともに財産を相続した。その他にも、ドイツの眼鏡メーカーであるフィエルマンAGの株式を、2024年1月に84歳で亡くなった父ギュンター・フィエルマンから相続したソフィー・ルイーズ・フィエルマン(29歳)がいる。

こうした動きは、世界中で高齢化が進むなか、長い間予想されていた世代間の富の移転が始まったことを示している。連邦準備制度理事会(FRB)によれば、米国ではベビーブーマー世代とその親世代(1964年以前に生まれた人々)が、家計の総資産147兆1000億ドル(約2京2000兆円)のうち95兆9000億ドル(約1兆4000億円)を保有している。今後は、そうした裕福な高齢者からの相続で毎年何兆ドルもの財産が入れ替わると予想されている。チャールズ・コーク(88歳)やフィル・ナイト(86歳)のような高齢の億万長者は現在、子どもたちに遺産を渡す準備をしている。

Snapのボビー・マーフィー(35歳)やメタのマーク・ザッカーバーグ(39歳)のような、かつての若手起業家の多くは年をとった。今のところ彼らのような若手起業家は出てきていない。今年、最年少億万長者のリストに新しく加わり、かつ起業家としてランクインしたのは1人しかいない。日本の佐上峻作(33歳)は、AIを使ったマッチングが特徴のM&A総合研究所で代表取締役を務める人物だ。同社の株価は2022年6月の上場以来、800%以上上昇し、彼は億万長者の仲間入りを果たしている。

ただ、若くして富を築いたからといって、起業家がその富を維持できる保証はない。ライアン・ブレスローは昨年、自力で富を築いた億万長者としては最年少のビリオネアだった。もし彼が失敗していなければ、今もそうなっていただろう。
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翻訳=江津拓哉

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