アジア

2024.04.23 10:30

アジアの一部の国でいまだに「現金が主流」である理由

安井克至
これら以外のアジア太平洋地域の国々は、ほぼキャッシュレス化している。ニュージーランド、オーストラリア、中国、韓国の場合、2022年の店頭決済に占める現金の割合はそれぞれ6%、7%、8%、11%にすぎない。

ハイブリッドモデルへの移行

アジアの農村部、ならびに高齢化が進んだ一部の先進国で、引き続き現金が使われていることは、金融サービス業者と政策当局にとって重要な意味をもつ。異なる人口層の多様なニーズや好みに対応した金融包摂に向けて、バランスの取れたアプローチが必要になるのだ。

金融機関は、戦略を見直して、デジタル決済と現金決済の両方に対応したハイブリッドなモデルを含める必要があるかもしれない。こうした傾向は、政策当局にとって、情報格差に取り組み、デジタル金融包摂の実現を目指して金融リテラシーを高めることがいかに重要であるかを浮き彫りにしている。

アジアの農村部と、高齢者の割合が非常に高いことで知られるアジアの先進諸国の両方で、いまだに現金払いが一般的であることは、金融エコシステムがいかに多様で複雑な性質を持つかということを思い出させる。デジタル金融サービスが成長を遂げる一方で、そうした地域で現金取引が根強く残っているのは、アクセシビリティやインフラ、そして信頼を巡る、より深い問題が存在していることを示唆している。

こうした問題に取り組むためには、現地の文化的状況をきめ細かく理解し、古い世界と新しい世界のあいだの溝を埋めるような、包摂的な金融政策が必要になる。アジアの金融が発展していくなかで、現金とデジタル・ファイナンスの共存は、その多様な経済的展望の決定的な特徴になりそうだ。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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