欧州

2024.04.18

ウクライナ戦争で急速に進化するドローン、その最新戦術とは

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両陣営の多数のドローン(無人機)が前線で飛び交っている以上、敵機との鉢合わせは避けられない。ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した2022年以来、操縦士が武器を搭載していないドローンを使って敵のドローンを追いやる「ドッグファイト(格闘戦)」が時折起きている。だが現在は異なるパターンが見られる。ドローン同士が予期せず対峙するのではなく、意図的な迎撃が行われており、小型のドローンが大型の爆撃ドローンを攻撃している。

これは第1次世界大戦で見られたパターンに似ている。初期の複葉機が偵察機から軽攻撃機、そして戦闘機へと進化する中で、主な任務は攻撃してくる爆撃機を撃墜し、制空権を取ることだった。そうしなければ敵機に攻撃されるため、不可欠なことだった。それから約100年が経ち、ドローンが飛行する空域の制空権をめぐる争いの中で、同じような動きが小規模に繰り広げられている。

ロシア軍のドローン迎撃機

ウクライナ軍が爆撃機として使用する大型ドローン、バーバ・ヤガーは夜間に飛行する。極めて正確に爆弾を投下して戦車やその他の車両を破壊し、ロシア軍部隊の間に恐怖を広げている。このドローンの音は聞こえるが姿は見えない。効果のある妨害電波を散発的に出す以外に、ロシア軍は重爆撃機を撃墜するための有効な方法を見つけられていない。そして今、ロシア軍の一人称視点で操作するドローン(FPV)がバーバ・ヤガーを探し出して意図的に突っ込んでいる映像が出回っている。

これは偶然ではない。

ロシアのドローン専門家で、米シンクタンクの海軍分析センター(CNA)と新アメリカ安全保障センター(CNAS)の顧問であるサミュエル・ベンデットはロシア国営メディアのタス通信の記事に言及しつつ「特定の大隊ではいま、パイロット訓練コースにドローン同士の戦闘を組み込んだ公式訓練が行われている」と語った。

ドローンの操縦士は周囲の状況をほとんど把握できない。一般的に、視界は前方と下方に限られている。そのため、ドローン奇襲を成功させるには通常、上方と後方から攻撃する。

FPVだけでなく、ロシア軍は標準的なクアッドコプターでもバーバ・ヤガーを狙っている。この場合、バーバ・ヤガーのローターを破壊するために、武器を搭載していないドローンを上空からバーバ・ヤガーの上に落下させる戦術を取る。攻撃側はドローンを失うことになるが、より大きなウクライナ軍のドローンの1機を道連れにできる。
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翻訳=溝口慈子

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