欧州

2024.04.11 09:30

ドローン対策の究極版? 甲羅のように身を覆った「亀戦車」がロシア軍に出現

遠藤宗生
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FPV(一人称視点)ドローンの操縦に長けているウクライナ軍の操縦士たちは、機体重量900g程度のドローンで戦車の最も弱い部分をピンポイントで攻撃できる。ロシア版フライング・エレファントの場合、おそらくその「耳」あるいは「甲羅」の縁の内側にFPVドローンを潜り込ませるだろう。

果たしてそんなことができるのかと疑問に思う人のために、先日、同じくドネツク州の村ベルディチ付近であった事例を紹介しよう。ドローンに追い詰められたロシア兵3人は、動かなくなって放置された戦車の下に隠れる。しかしウクライナ軍の操縦士は続いて新たなドローンを、彼らが潜んでいるところ、つまり戦車の下、左右の無限軌道(キャタピラ)の間に誘導して突っ込ませた。

ロシア版フライング・エレファントの乗員たちが今後、実際に不運な目に遭う映像が出てきた場合、笑いたい人は笑ってもいい。けれど、あまり長くはそうしないほうがいい。戦場で新たな脅威が出現した場合、まずは即席で対策を講じるものだ。しかし、その脅威が長く続くにつれて、その対策は次第に洗練されていき、最終的にはもはや即席のものではなくなる。

そして、これはまさに戦車のドローン対策について言えることなのだ。ロシアが2022月2月にウクライナに全面侵攻してから数カ月後、ロシア軍の戦車にとってはドローンが最大の脅威になった。そこでロシアは、シリアの戦闘員らのやり方を真似て、金属製の粗雑なルーフやケージを戦車に溶接し始めた。その後、ウクライナ側も自軍の戦車に同様の対策を施すようになる。


2年後、こうした「ケージ(鳥かご)装甲」は、ロシア軍とウクライナ軍の多くの戦車ばかりか、パレスチナ自治区ガザへの軍事侵攻に参加しているイスラエル軍の戦車にも標準装備されるようになっている。

戦車に即席で追加されるようになっているのは装甲だけではない。ロシア軍もウクライナ軍も、飛来してくるドローンを無力化すべく、さまざまなジャマー(電波妨害装置)やアンテナも車両に取り付けている。見た目はごてごてした異様なものもあるが、装置が機能していないとは限らない。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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