平均17日で再登校の支援サービス、不登校「見守る」風潮に革命か

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小中学校における不登校の児童・生徒数は増加傾向にあり、2022年度調査によると約30万人にのぼる。
 
不登校になった場合、日本では子どもの自己肯定感を高めるために、大人が見守りの姿勢で向き合うのが一般的だ。昨今は不登校の子どもが学校へ行かず、好きなことを伸ばす風潮を受け止める傾向にあり、フリースクールなどを選択するケースが浸透してきた。
 
一方、こういった時代の流れに警鐘を鳴らすサービスもある。小中高生の不登校支援サポート「スダチ」代表の小川涼太郎は、「明確な目標がないまま、安易に不登校を継続させると社会へ出るのが難しくなる可能性がある」と語る。同社は子どもたちの学校への再登校を第一目標に据え、発達心理学と脳科学に基づく支援を展開。利用者の約9割を平均17日で再登校へ結びつけてきた。
 
不登校の子どもを見守る風潮が浸透した今、なぜ再登校を強く推奨するのか。

不登校の背景にある3つの共通点

まず、スダチが支援の対象とする不登校の定義から説明しよう。不登校と言うと、いじめなどの問題が想起されがちだ。ただ、文部科学省の調査によると、原因の上位に挙がるのは「無気力・不安」「生活リズムの乱れ・非行」「いじめを除く友人関係をめぐる問題」。小川はそうした課題を抱える子どもを中心に、年間約500名への支援を行っている。

スダチ代表の小川涼太郎

スダチ代表の小川涼太郎

そのなかで、不登校の子どもには「デジタル機器への依存」「生活習慣の乱れ」「親子関係の逆転」という3つの共通点があることに気が付いた。
 
「学校へ行かない子どもの多くは、YouTubeやTikTok、フォートナイトなどのオンラインゲームで遊んでいます。夜中までデジタル機器に触っているので朝起きられなくなり生活習慣が乱れる。そういった状況を継続すると、好きなようにやらせてくれる親を軽視してしまい、子どもが優位に立ってしまう親子関係の逆転現象が起きるきっかけになる可能性があります」
 
冒頭でも紹介したように、学校は「見守り姿勢」が基本なことに加え、昨今は多様性のもと子どもの個性を認めようという社会的風潮がある。小川は「もちろんいい面はたくさんあるが、やるべきことをやらずに、やりたいことだけができる社会は存在しないという現実があります 」と話す。
 
重要なのは、この3つの点をもつ子どもの多くが、進路選択や進学後に問題を抱えているということだ。不登校を継続して通信制や定時制の学校へ進学した場合、高校卒業後、就職でも大学進学でもない「進路未決定」の割合は37%と、全日制に比べて高い(文科省調査)。
 
「スダチは、学校に行けないことを否定するのではなく、学校に行くという習慣があることで、生活リズム、親子関係、進路などに良い影響があるという考え方です。不登校でも地道に努力ができる人はフリースクールなどの選択もありですが、一人で家にいながらそんなに意思を強く持てるのは稀です」
 
また、現実問題として、不登校は家族にとっての危機でもある。特に保護者に大きな負担がかかる。家にいる子どものために仕事をセーブしなければならないうえ、食事の準備や学習環境の情報収集などを行う必要がある。ときには保護者自身がうつ病にかかるケースも。
 
スダチの試算では、不登校の子どもに同年代と同等の知識を育もうとするとフリースクールや家庭教師にかかる費用の総額は月20万円以上。同社がサポートする保護者の多くが「学校へ通わせたい」という気持ちを持っているという。
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取材・文=ゆきどっぐ 編集=露原直人

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