アート

2024.04.10 14:15

「ついに2026年落成」のサグラダ・ファミリア─ 驚嘆の構造美をひもとく

石井節子
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5世代以上にわたって銅細工師だったガウディの家系

ガウディの家系は5世代以上にわたって銅細工師であり、カンプ-デ-タラゴナで栽培されたブドウからアルコールを蒸留するための桶を製造していた。

ガウディ自身も認めているが、銅板を叩いて作られた桶の湾曲したフォルムに、ガウディに大きな影響を受けている。ガウディはこの銅桶の湾曲したフォルムから幾何学的に、平面に作品をうつしだすのではなく、空間に作品を視覚化していくことを学んだという。

「色鮮やかで、輝き、柔らかい金属のように変形しやすく、彫刻的な生き生きとした形という、幼少期と父親の仕事場からヒントを得たこのようなビジョンは、彼の建築制作の中で一貫していく要素となった」とローは書いている。

また、ガウディは内気な子供で、父の田舎の家で何度も夏を過ごした。おそらくスペインで続いていた内戦から逃れるためだろう。

ガウディの性格と芸術性を形成した原点は、別の事象も関与している。ローは続けてこう述べている。 「ガウディの観察能力は、彼がリウマチ熱に苦しむ病弱な子供であったことも関係している。病気がちなガウディは他の子供たちと一緒に遊ぶことができなかった。一人でいることが多かったため、ガウディは自然を観察することに時間の多くを費やした。そして、彼は、世界に無数に存在する形には、構造物に非常に適している形と、装飾に非常に適している形がそれぞれあることを、その知性をもって悟ったのである」。

バイオミミクリー。サグラダ・ファミリア内部の柱。© Expiatory Temple of the Sagrada Família

バイオミミクリー。サグラダ・ファミリア内部の柱。© Expiatory Temple of the Sagrada Família

ガウディの自然に対する関心は、結果的に彼の制作に影響することとなった。ある意味で彼の作品は、生物や植物の機能、構造が持つ優れた性質を利用しようとする、生体模倣(バイオミミクリー)の一形態であると言えよう。

ガウディはまた、建築の個々の要素の性質と本質に関心を抱いていた。簡潔に表現するならば、自らの職業を極めし者となったのだ。ガウディは自分の作品のすべての構成要素の細部をすべて把握するだけでなく、建設テストの前に、例えば、重さがかかるときなど、外部から力が加わったときに作品の部品にどのように力の負荷がかかるかという実験までも行った。また、従来の設計器具(コンパスなど)や構造コンポーネント(バットレス、松葉杖など)をほぼ用いなかったため、彼は自由かつ創造的に、また、必要に応じて即興で作業することすら可能だった。

平面的なユークリッド幾何学より3Dモデルを好んだ

さらに、ガウディは平面的なユークリッド幾何学の研究よりも3Dモデルを好み、自然の中に見られる複雑さを深く理解するために、自然界で常に新しい形を探し、導き出し続けた。自然の造形への関心の中で、彼が特に注目した形がある。

ここでは、ローの言葉を引用して説明しよう。 「ガウディは、自然界には、ゆがんだ曲面、つまり直線だけで作られた曲面が頻繁に見られることに気づいた。杖や骨や筋肉の腱のような、繊維質で構成された自然の形はすべて、繊維がまっすぐなままで、ねじれたりゆがんだりすると、いわゆる罫線状のゆがんだ面を作り出す。これらの反った曲面が幾何学的に研究されるようになったのは18世紀末のことであり(主にガスパール・モンジュによって)、ヘリコイド、双曲放物面、双曲放物面、コノイドという難しい名前が付けられた。名前は難しいが、幾何学的な形は非常に理解しやすく、作りやすい」。

カサ・バトリョの内部。© Listone Giordano

カサ・バトリョの内部。© Listone Giordano

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