欧州

2024.03.25

空中で爆発する「散弾ドローン」、ウクライナ軍が多用し始める

米国製のM18クレイモア対人地雷(Shutterstock.com)

それがウクライナの戦場の上空に大量に現れるようになったのは昨年秋のことだった。空中爆発(エアバースト)させる信管付きの擲弾(てきだん)か炸裂弾を装着した、小型のFPV(1人称視点)ドローン(無人機)のことだ。

遠隔操作によって空中で起爆させ、小さな破片を広い範囲に撒き散らすこのドローンは、地上にいる無防備な歩兵に対して、目標や地面にぶつかった衝撃で爆発する普通のFPVドローンよりもはるかに大きな危険をもたらす。

ウクライナの前線で空中爆発ドローンはすでに相当危険な兵器になっているが、ここへきてさらに危険なタイプが広く使われ始めた可能性がある。ドローンの弾薬を指向性弾頭にしたものだ。指向性弾頭は空中で起爆させると、殺傷性の破片が円錐状の狭い範囲に飛び散る。

まるで散弾銃のように。あるいはクレイモア地雷が空中で爆発するように。米国製のM18クレイモア指向性対人地雷は爆発すると、直径3mmの鉄球700個が60度の弧の範囲で、上方約1.8m、前方30mかそれ以上まで飛び散る。米陸軍によれば「密集した歩兵による攻撃」に対して使うことを想定して設計されたものだ。

「空飛ぶクレイモア」については、米フォーブスの寄稿者であるデビッド・ハンブリングが先日、記事で詳しく取り上げている。

ロシアがウクライナで拡大して2年1カ月たつ戦争で、指向性弾頭型を含め、空中で爆発するドローンがそれぞれの敵側の部隊を吹き飛ばす映像は数え切れないほどある。それはロシア側のドローンである場合もあるが、たいていはウクライナ側のドローンだ。最近のある映像はとりわけ悲喜劇的なものだった。

映像のなかでは、2人のロシア兵が、砲弾であちこちに穴ができた場所をぶらぶら歩いている。そこにウクライナ側のFPVドローンが近づいてくる。2人は手に持った物でドローンをたたき落とそうするが、うまくいかない。

おそらく数キロ離れた場所から操縦している操縦士は、しばらく2人の周りでドローンを旋回させたあと、指向性弾頭の破片が不運な2人組に命中するように照準を合わせる。

ドン。ドローンから飛び散った何百もの破片に切り刻まれ、2人は即死したようだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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