3人のプロが生み出す「爆発的成長」と「M&A市場変革」|Boost Capital

小澤隆生 堀 新一郎 高橋健太|Boost Capital

日本のベンチャーキャピタル産業に旋風を巻き起こすファンドが設立された。事業、VC投資、PE投資のプロによる「三本の矢」で挑む世界とは──。


「2024年から始める新たな挑戦はファンド事業になります」。24年2月1日、堀新一郎のファンド新設の投稿がXのタイムラインを騒がせた。ファンドは3人による共同GP(ゼネラル・パートナー)体制。ZVenture Capital(ZVC)の元代表取締役社長の堀。マッキンゼー・アンド・カンパニー、独立系PEファンド「MBKパートナーズ」出身の高橋健太。そして、ヤフー元代表取締役社長CEO小澤隆生だ。

ベンチャーキャピタル(VC)、プライベートエクイティ(PE)、事業づくり──3つの領域のプロが集った新しいファンド。「事業を、起業家をBoostしていく」をコンセプトにBoost Capitalと名付けられた。スタートアップ投資とM&A(合併・買収)を行う。経験も実績も十分な3人が集い、今なぜファンド事業なのか。

23年10月、5社の合併でLINEヤフーが誕生した。小澤は、11年前に自身が入社したヤフーという法人格がなくなるタイミングで、同グループの経営から退いた。退任後、着想したのがこのファンドだ。

「スタートアップの資金調達額は10年で約10倍に。底上げはできたが、出口戦略は拡大していない。解決策は2つ。とにかく大きな企業をひとつでも多く生み出す。もうひとつは、買収を増やすことだ」(小澤)

買収には2種類ある。大企業のスタートアップ買収か、スタートアップ同士で買収を行い大企業になるか、だ。Boost CapitalはファンドとしてM&A市場の変革に挑む。「M&A件数を増やし、上場時の時価総額も数倍に上げたい。100億円以下での上場ではなく、300億から500億、1000億での上場企業を続々と生みたい。一方、それ以下の時価総額の企業は、大企業による買収が望ましい」(小澤)。

この小澤の考えは、VCの現場を熟知する堀との問題意識とも重なった。堀はZVCにて総額780億円の運用を担い、インドネシア財閥と連携し東南アジアを中心に投資するファンドのパートナーも担ってきたVCのプロだ。「海外から帰るたび、日本の上場スタートアップのバリュエーションの小ささを考えずにはいられなかった。小さいから海外投資家が入れず、大きくならない負のスパイラル。この構想なら、市場の課題解決ができると参画した」(堀)。

通常のVC、PEにはないBoost Capital最大の武器は、小澤の事業経験だ。小澤には楽天球団の立ち上げ、PayPayを国内最大のキャッシュレス決済サービスへと急成長させた実績がある。

「売り上げと利益を伸ばすことをやってきた事業の経験者が、ひとりでも多く投資セクターに入ってきたほうがよい。投資サイドに回れば、事業を爆発的に成長させることができる」(小澤)

この投資家による事業の成長促進を、小澤らは「ブースト」 と表現する。小澤は通常のVCと違って、買収を戦略的に行う必要性からPEのプロである高橋に声をかけた。高橋は、GMOインターネットグループに買収されたレストラン予約管理サービス「OMAKASE」の創業株主でもある。ゼロイチの事業立ち上げからのM&Aを、当事者として知る稀有なPE出身者だ。

「PEは、VC以上に事業側から転身した人が少ない領域。ファンドマンの3つのスキルは、ソーシング、エグゼキューション、バリューアップ。リターンに特に影響するのは、ソーシングとバリューアップ。その役割を担えるのは、事業のノウハウをもつ人。小澤ほど、適任な人はいない」(高橋)
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文=フォーブスジャパン編集部 写真=平岩享

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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