複雑な概念をシンプルに説明、バフェットのコミュニケーション戦術

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ウォーレン・バフェットが投資会社バークシャー・ハサウェイの株主に宛てた年次書簡は、ビジネス界が毎年とりわけ心待ちにしている公開情報の一つだ。この数十年間というもの、ジャーナリスト、投資家、リーダーたちはバフェットの知恵と知見を求めて、この書簡を読み解いてきた。

バフェットは複雑な金融の概念を、簡潔で理解しやすく、読んで楽しい平明な文体で語ろうと努めている。

バフェットのビジネスパートナーで2023年11月に他界したチャーリー・マンガーは、このアプローチを「教育的でおもしろく、ためになる」と評し、「コーポレート・アメリカ(アメリカ株式会社)で最も優れた、必読の書簡だと思う」と述べていた。

2024年版のバークシャー・ハサウェイ書簡は、友人でありパートナーであったマンガーへの感動的な賛辞で幕を開ける。バフェットはそこで、ほかならぬマンガーが称賛したバフェット流のコミュニケーション戦術を使っている――それは、たとえ話だ。

建築家と建設業者

バークシャー・ハサウェイ創設におけるマンガーの貢献について、バフェットはこう記している。

「チャーリーは、今あるバークシャーの『建築家』であり、私は彼のビジョンを日々組み立てていく『ゼネコン』の役割を果たした」

たとえ話というのは、2つの物事の類似性を示す拡張比喩だ。その主な狙いは、抽象的な概念を、普通の人が理解できる具体的な言葉で教え、説明することにある。

優れたたとえ話が注目を浴びるのは、問題や議題をわかりやすくしてくれる単純な比較が求められているからだ。バフェットはそれを承知していて、人々が望むものを差し出しているのだ。

バフェットがあえて建築家と建設業者のたとえを選んだのは、そこに独自性があり、自分の言いたいポイントを簡潔に説明できるからだろう。

たとえ話は、人々の記憶に残り、かつ共有されることで効果を発揮する。ここで、2024年の書簡から生まれたメディアの見出しの例を見てみよう。

バフェット、「建築家」マンガーを称賛(Yahoo!ファイナンス)

ウォーレン・バフェット、バークシャーの「建築家」の死を悼む(ロイター)

バークシャー・ハサウェイの「建築家」:ウォーレン・バフェットによるチャーリー・マンガーへの賛辞(CNBC)
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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