経済・社会

2024.02.23 15:15

ギム・フエイ・ネオ、「平均気温1.5度上昇」で求められる日本の技術とリーダーシップ

山本 智之

欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービス(C3S)は2024年2月9日、世界の過去12カ月の平均気温が観測史上初めて産業革命前の平均を1.52度上回り、過去最高となったと公表した。

気候変動対策が待ったなしのなか、日本が果たすべき役割はなにか。そして地球環境の未来を左右する注目の技術やカテゴリは。世界経済フォーラム取締役で23年の「TIME100 Climate」にも選出された気候変動のスペシャリスト、ギム・フエイ・ネオに話を聞いた。



ギム・フエイ・ネオ◎世界経済フォーラム取締役、「自然と気候」部門長。マッキンゼー・アンド・カンパニーの経営コンサルタントやシンガポールに本社を置く投資会社テマセクのマネージング・ディレクターなどを歴任したのち現職。米スタンフォード大学経営学修士、ケンブリッジ大学工学修士。2023年には世界で最も気候変動に影響を与えるリーダーのひとりとして「TIME100 Climate」に選出された。


──「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議」(COP28)には締約国198カ国などが参加し、化石燃料からの脱却に向けたロードマップが承認されました。COP28の成果をどう捉えていますか。

非常に包括的なアプローチを示したことで、気候変動対策への弾みがついた。国際社会に求められることは、この勢いを維持し、環境危機に対処するためにマルチステークホルダー・アプローチを採用し続けることだ。

COP28では、2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍にするというコミットメントだけではなく、持続可能な農業とレジリエントな食料システムに関するアジェンダも取り入れられた点は注目に値する(注:130カ国以上が「農業、食料および気候に関するCOP28 UAE宣言」に署名した)。食料が温室効果ガスの排出源であることを認識し、食の分野を通じて農家から消費者まで幅広い人々が気候変動の課題解決に大きく貢献できることを示した。気候変動というと温室効果ガスの排出量に注目が集まりがちだが、自然や水、土壌の健康などについても語る必要があるのだ。

──COP28を真の歴史的転換点にするために必要なことは。

何より重要なのは実行力だ。企業や政府が解決策を示すことで取り組みは加速しているが、まだ十分ではない。私たちは今、持続可能な環境への配慮と安価で手ごろなエネルギー価格、アクセスの公平性というトリレンマに直面している。政府や企業が公約を実行に移すと同時に、システム変革を推進するために互いに協力する必要がある。
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文=瀬戸久美子 写真=世界経済フォーラム

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