国内

2024.02.15 12:05

「画期的な田舎町」へ。原発事故で95%が避難した双葉町のいま

田中友梨
3012

描くことから何かが始まる

「Futaba Drawing Camp」には、広告クリエイターの佐藤ねじやホテルプロデューサーの龍崎翔子、小説家のカツセマサヒコ、ほかにもデザイナー、コンセプトアーティスト、建築家、映像作家、広告プランナーなど様々なジャンルのクリエイター20人が参加。双葉町在住で浅野撚糸の工場に勤務する10代の社員2人も参加した。
「Futaba Drawing Camp」の参加クリエイターたち

今回、“妄想”のお題となったのは、海岸近くにある土地の活用法。JR双葉駅から2kmの場所にあるこの土地は元々水田や畑が広がる農地で、隣接地には町営のキャンプ場があった。津波の被害を受けて更地になり、被災後はアクティビティエリアとして開発予定となっている。

クリエイターたちには「もしこの土地の活用方法を、自由に考えるとしたら?」と投げかけた。双葉町はまだこの土地の開発計画を具体的に決めていないため、「描くことから何かが始まる」という考えのもと、実現可能なアイデアだけでなく妄想レベルの企画も出してもらい、視点を最大化することを重要視したという。
今回のお題となった海岸沿いの土地(筆者撮影)

キャンプでは、1日目に町内の視察や周辺住民へのヒアリング、「東日本大震災・原子力災害伝承館」での学びを経て、2日目にそれぞれのアイデアを発表した。

地形を活かしコスト感も考慮した「ジオパークサウナ」(佐藤ねじ)という比較的現実味のある提案から、未完成のまま運営する「完成しない図書館」(プランナー / デザイナー 小板橋瑛斗)という斬新なアイデアも。

ほかにも、「あそべるガソリンスタンド」「再会するためのホテル」など、ユニークなアイデアが集まった。浅野撚糸の社員たちは「双葉で見られる星の綺麗さを知ってほしい」などの想いからドーム型の天井を備えた「流れ星の見えるカフェ」を提案した。

「マチガニア」のアイデアを発表する企画作家の氏田雄介(筆者撮影)

発表を見ていた経産省、双葉町の職員たちからは大きな拍手が送られた。経済産業省 福島浜通り映像・芸術文化若手チームの髙橋拓磨は、「僕が2年ぐらい双葉町に関わっていて知った、この町が大事にしていることや唯一無二の特徴を、皆さんはほぼ1日で見抜いていて、クリエイターさんならではのスキルだなと思いました」と話す。

双葉町復興推進課の藤澤槙吾も「同じ気持ちです。双葉町のことを初めて知った方が多い中で、街のシンボルである“だるま”を作品の中に使っていただくなど、地元への愛にも溢れていてすごく嬉しい」と講評した。
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文=田中友梨 写真=「Draw in FUTABA」提供

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