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2024.02.06 09:00

評価額1兆円の米「スケールAI」がTikTokとの提携を断念した舞台裏

安井克至
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スケールAIの公共部門担当幹部のジョン・ブレナンは、フォーブスの取材に、同社が現在TikTokと契約を結んでいないと述べ、ワンも「TikTokとは、データや金銭のやり取りをしたことがない」と述べた。両者とも、国家の安全保障に対する同社のコミットメントを強調し、ワンは、同社がバイデン政権による「AIの安全・安心を確保するための自主的なコミットメント」に署名した7社のうちの1社であることを指摘した。

「データのラベルづけ」で事業を拡大

スケールAIは、外部の委託労働者の力を借りてAIの構築に欠かせない「データのラベルづけ」という単純作業を請け負うことで事業を拡大し、2020年に政府との取り組みを開始した。ワンは、昨年夏のフォーブスのインタビューで、同社の防衛部門に関するビジョンは、2018年に彼が中国を旅行し、ByteDanceなどのテック企業のオフィスを訪れた際の経験に触発された部分もあると述べていた。彼は、中国企業のAIの取り組みに感心したが、一方で「中国が米国のAI分野のリーダーシップを脅かすことを懸念した」と述べていた。

スケールAIは現在、Palantir(パランティア)やAnduril(アンドゥリル)らと並んで、国防関連の契約を最も求めているテクノロジー企業の1社に挙げられる。ただし、同社の内情に詳しい2人の関係者によると、同社の防衛部門の売上高は、同社の年間売上高を2022年の約2億5000万ドルから、2023年に推定7億5000万ドルにまで押し上げた商業部門には及んでいないという。

この成長に拍車をかけたのは、同社が提供するRLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)と呼ばれるサービスへの、AI企業からの需要の急増だった。RLHFとは、言語モデルを人間のフィードバックからの強化学習で微調整することを意味する。スケールAIは、現在までに、アクセルやインデックス・ベンチャーズといった優良投資家から6億ドルを調達している。
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編集=上田裕資

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