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2024.02.05 16:00

「人が活きる」ために──パーパスドリブンなオカムラの「明るいDX」

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データ基盤の構築支援によりビジネスに貢献するインサイトテクノロジー社の協力のもと、本質的なデジタル・データ活用のために、「使える」「使われる」データ基盤の構築が重要であること、またその困難さとそれを乗り越えることで広がる可能性について提示する連載企画。

第五回では、オフィス家具大手であるとともに、働き方や働く場に関するトータルソリューションを手がけるオカムラのDX戦略部部長 池田秀明(以下、池田)を訪問。経済産業省が定める「DX認定事業者」であり、DX人財の育成への取り組みは各方面で評価が高いというが、同社のデジタル戦略にはどのような考えがあるのだろうか。インサイトテクノロジー取締役 CPOの石川雅也(以下、石川)が話を聞いた。


オカムラウェイの全社浸透でDXの下地をつくる

石川 本日はよろしくお願いします。まずは池田さんの経歴と、現在どのような立場でDX推進をされているのかを教えてください。

池田 私は1986年に岡村製作所に入社して以来、情報システム部門でいわゆる「守りのIT」を担当するかたわら、社内業務の改善などの新規企画案件も数多く手がけてきました。会社のほうはといいますと、2018年4月に社名をオカムラに変更した後、20年の中期経営計画でDX化の方針が打ち出されたのを機に、私もDX化プロジェクトに参画して戦略を練り上げ、22年4月にDX戦略部を発足させて「攻めのIT」の推進を本格的に開始した、というところです。

石川 社名変更の際は、インナーブランディングにもかなり注力されたのではないでしょうか。

池田 おっしゃるとおりです。社名変更の際にミッションを定めました。その後オカムラの経営理念を体系化した「オカムラウェイ」を策定し、社内に浸透させるための活動を実施しています。オカムラウェイは、ミッション(経営姿勢)、オカムラ宣言(目指すありたい姿)、私達の基本姿勢(大切にする価値観)から構成されており、その根幹には「人が活きる」という視点があり、また、創業の精神や社是、モットーといった創業以来大切にしてきたオカムラのDNAが根底にあります。

石川 このあたりは、字面だけではなかなか全体に伝わりにくい部分のように感じます。全社員に浸透させるために、なにか具体的な施策はとられているのでしょうか。

池田 カルチャーブランディングを行う部門が中心となって、オカムラウェイの浸透を進めています。全社員に向けた社長メッセージやツールを使って広報しており、社員もそれを見てはいますが、それだけでは根底にある考え方を共有するのは難しいです。全社員がオカムラウェイを自分ごととして捉え、腹落ちできるように、策定後の1年間で、各拠点を回るキャラバンと呼ばれる社内向け説明会を計60~70回ほど実施しました。今も各部門でワークショップや話し合う機会を継続して設けており、オカムラウェイはかなり浸透してきているのではないかと思います。

石川 なるほど、そこまで徹底してブランディング活動をされているのは、素晴らしいですね。私もいろいろな企業のDXのお手伝いをしてきていますが、DX以前に、自分たちが何を大切にして、社会に向けて何を発信していくのか、という考え方が社内で共有できていないケースも多く見られます。ここが曖昧だとDXの方向性も曖昧になり、迷走してしまうことにもなりかねません。

オカムラは、さまざまなチャネルを通して「よりよい働き方、生き方」を社会に浸透させるための活動をされており、その企業文化には個人的にとても興味をもっていたのですが、今のお話を聞いてかなり納得できた気がします。全社員が経営理念を腹落ちして理解し、内側が輝いている企業というのは、いわばDXの前段階のハードルをすでに越えた状態ですので、DXも比較的スムーズに進むのではないでしょうか。

池田 オカムラウェイの策定が21年7月、私たちのDX戦略部の発足が約1年後の22年4月ですから、ちょうど良いタイミングだったと思います。

池田秀明 オカムラ DX戦略部 部長

池田秀明 オカムラ DX戦略部 部長

DXのグランドデザインと、データ利活用の現在地


石川 次に、DX戦略をどのように実践されているかについてお伺いします。まず、オカムラの考えるDXのグランドデザインについて教えてください。

池田 オカムラウェイに基づいてDXの方向性を定め、戦略方針として「事業のDX」、「業務のDX」、「経営のDX」の3本の柱を立てたうえで、それらを支える土台として、「人財育成」と「システム基盤強化」を合わせた5つのDX戦略を打ち立てています。

オカムラのDX戦略

オカムラのDX戦略


「事業のDX」は、オフィス環境、商環境、物流システムという3つの事業体において、デジタル技術を積極的に活用した製品・サービスを生み出すことで「社会や顧客の体験価値」を高めていこうという取り組みになります。つぎの「業務のDX」は、現在の業務にデジタル技術を取り入れ、業務プロセスの効率化や新しい働き方の実現を通して「従業員の体験価値」の向上を図ろうという取り組みです。そして3本目の「経営のDX」は、データドリブンでの意思決定を可能とする、「経営管理の高度化」を目指したものになります。

石川 データの利活用という観点での現在地はどのような状況でしょうか。

池田 DXを進めるにあたっては、土台のひとつである「システム基盤強化」の部分でデータ基盤を整備し、3本の柱の部分にデータを供給するというのが基本形になります。弊社では、従来の基幹データはOracle BIを使った統合管理を行っていますので、その範囲内のデータについては整備できています。ただ、IoTからのリアルタイムのデータなど、Oracle BIでは管理しきれずAWSクラウドに取り込んでいるデータ等については、それぞれの現場での分析・意思決定として活用しているものの、それをたとえば「経営のDX」における意思決定に用いるというところにはまだ至っておらず、今後の課題だと思っています。

石川 基幹データのデータ活用基盤がきちんとできているだけでもすごいですね。できていない企業のほうが圧倒的多数ですから。本格的に経営判断のツールとしていくには、たとえばある事業と別の事業のデータを組み合わせてみるとか、なんらかの試行錯誤は必要かと思います。データ活用のための専門の部署をつくって検討する、などを試みてもよいように感じます。

石川雅也 インサイトテクノロジー 取締役CPO

石川雅也 インサイトテクノロジー 取締役CPO

DXLPで、DXを支える「ビジネスデザイナー」人材を育成する


石川 3本柱のDXを支えるもうひとつの土台である「人財育成」についてはかなり力を入れておられるようですが、こちらについてもご説明いただけますか。

池田 はい、人財育成については、「ビジネスデザイナーを現場レベルで育てていこう」という方針を決めました。ビジネスデザイナーとは、現場の社員自身が、日々お客様と接し、業務をこなしていくなかで「解決すべき課題」を発見し、必要に応じてデジタル技術を活用して解決に向けた道筋を立てていく、その一連のスキームを主体的に提案できるようなスキルを身につけた人材のことを指します。

そして、この方針に基づいて、DXLP(Digital Transformation Learning Platform)と銘打った人財育成プログラムをつくり、社内からの公募で手を挙げた社員50人程度を対象にした教育コースを21年から年1回のペースで実施しています。教育内容は、発想力や企画力を身に着けるビジネススキル講座、デジタルの基礎知識や情報展開力を身に着けるデジタルリテラシー講座、向上心や主体性を身に着けるマインドセット講座などの講義やワークショップを経て、自身のビジネスアイデアを構築しプレゼンするところまでがワンセットとなります。このうち良いもの10個ぐらいは社長や役員にも聞いてもらい、承認を得られたものは正式なDXプロジェクトとして推進しています。

石川 承認されたプロジェクトのPM(プロジェクトマネージャー)は、起案者自身が務めることになるのでしょうか。

池田 基本的にはそうです。PMに求められるスキルは、ビジネスデザイナーのスキルとは異なる部分があるため、現時点ではDX戦略部のメンバーがサポートしながらタッグを組んで推進する形が多いのですが、将来的にはビジネスデザイナーにPMスキルもつけてもらうような方向で考えています。いずれにせよ、プロジェクトの推進に不可欠なのは、プロジェクトをリードする人の「熱意」ですから、あくまでも起案者が主体性をもって進めるということを大事にするようにしています。

石川 そこは非常に共感できますね。プロジェクトというのは、やはりそれを推進する人の熱意がないと進まない。一方で熱意というのは、外から「熱意をもちなさい」と言って湧き出てくるものでもありません。そういう観点から、弊社では「事業を経験した人が周りにたくさんいる」という環境を、普段から、ときにはアルコールも交えて提供する、ということもやっています。日頃会話している人が、交流の場で「こうやって起業したんだよ」みたいなことを言うと、「あの人ができるんだったら私もやってみよう」とごく自然に熱く考えられるようになります。

池田 新しいビジネスやサービスの発想の参考になるように、社内新規サービスやプロジェクトの立ち上げ・推進をしている他社の方を招いて、その方の話をセッションに取り入れるといった取り組みも行っており、社員からは「ぜひ新規ビジネスにチャレンジしたい」というような感想が届いています。ただ、現時点では、マネタイズも含めてビジネスモデルに落とし込めている起案はまだまだ少なく、プロジェクト化まで至っているのは改善系の「業務のDX」の提案がほとんどだったりはするのですが……。

今後は事業DX系の起案も増えると期待しており、そういう起案に対してどんなステージゲートを設けて、どう進めていくかをある程度テンプレート化し、プロジェクトを支援できるようなフレームを整えていく、ということも私たちの役割だと考え、プランを練っているところです。

石川 理想的な進め方だと思います。オカムラウェイの浸透で「人が活きる」というコンセプトを全社員に行き渡らせ、並行してDXLPという学びの場を通じて、自ら起案したプロジェクトを推進する経験をもつ人が増えていき、組織横断でその知見が広がっていく。また、現在はまだ少ないかもしれませんが、事業系の起案が増えたときに備えてそれを支援するためのフレームづくりも着実に進められている。

弊社がこれまでサポートしたお客様のケースでは、DXの方向性が不透明になりがちなことから、DXを推進する立場の人はともすれば暗くなってしまうことが少なくありません。しかし、オカムラのDXは、ステップを踏んで進化していくという方向性が全社員に明確に示されている。「明るいDX」と言えるのではないかと思います。

DXの将来展望~生成系AIの活用とデータの民主化


石川 オカムラにおけるDXの将来展望についてお伺いできますか。

池田 今後2~3年の大きな鍵となるのは、やはり生成系AIです。23年6月にChatGPTを社内導入していますが、利用頻度はまだあまり高くありません。「プロンプト」と呼ばれる質問の巧拙によって結果が大きく変わるのに、適切な質問ができないまま使ってしまい、有効なリターンが得られず「使えない」と思ってしまうケースが多いのです。まずは質問のテンプレートを用意するなどして利用シーンを広げ、次の段階としてはChatGPTに社内情報を学習させることで、社内の各部門に寄せられる多種多様な細かい問い合わせに対して効率よく応えられるようにしたいと考えています。

石川 ChatGPTの問い合わせ業務については、社内情報に加えてお客様とのやりとりの情報を学習させることでさらに精度を上げられると思います。ただその際、名前やIPアドレスなどの情報を正しくマスキングする必要があり、これが意外にも難しいんですね。弊社では、大規模言語モデルを使った「フリーテキストマスキング」という製品を開発しており、それを使うと99%の精度でマスキングができます。マスキング後のデータを生成AIのナレッジとして投入することで、問い合わせ業務の効率を大きく上げることができるはずで、いまある自治体とPoCを進めているところです。

池田 完成の際にはぜひご紹介ください。将来展望という意味では、データの民主化も最重要課題の一つに位置付けています。Oracle BI上の基幹系データはアクセスや扱うデータに制限がありましたが、今後はIoTデータを含むすべてのデータを全社員が自由に扱えるよう、原則的に開放する方向で基盤整備を行い、業務効率や製品・サービスの質を向上させ、社員・顧客の体験価値向上につなげていきたいと考えています。

石川 データの民主化の文脈では、「データカタログの整備」が使いやすさの重要ポイントになるでしょう。この機能についても、AIを活用してメタデータをある程度自動的に付与する製品を提供していますので、ご興味があれば検討いただければと思います。

日本のDX推進にはさまざまな成功・失敗から有効な仕組みを導き出すことが必要不可欠です。DXとパーパスを掛け合わせるメリットをはじめ、明るい未来をみんなで見据え、具体的なアクションを日々実践することで内側から輝くオカムラのDXには、そのためのヒントがたくさん詰まっていたと感じます。

本日はありがとうございました。


石川雅也(いしかわ・まさや)◎日本オラクルを経て1995年にインサイトテクノロジーを創業。2000社以上に導入された「Performance Insight」をはじめ、10年以上連続して国内データベース監査ログ製品市場シェアNo.1となる「PISO」などの製品開発を主導。2011年から同社のCTO(最高技術責任者)、2021年からCPO(最高製品責任者)を歴任。現在も同社の製品開発の要として、市場のニーズを見据えた先進的技術による自社製品開発の方針を定めている。

池田秀明(いけだ・ひであき)◎1986年に岡村製作所(現:オカムラ)へ入社。情報システム関係の仕事に従事し、開発担当、企画担当を経て、2022年4月より現職であるDX戦略部部長。販売、生産、ロジスティクス、会計と幅広いプロジェクトに携わってきた経験を生かし、さまざまなDX施策に取り組み、社会・顧客、そして社員の体験価値向上のためにDXを推進している。


【インサイトテクノロジーについて】
1995年の創業時から一貫してデータベース技術を追究し、企業自らが良質なインサイトを得るためのデータ活用基盤「インサイト・インフラ」関連の製品をプロフェッショナルサービスとともに提供し、企業におけるデータの価値の最大化、データ利活用の統制、データガバナンスソリューションの導入に貢献している。同社が主催するデータ技術者向けカンファレンス「db tech showcase」には、世界中からデータ技術のエキスパートが講師として登壇し、毎年1,000名規模のエンジニアが参加する。

インサイトテクノロジー
https://www.insight-tec.com/

■Insight Governorについて
「Insight Governor」は、企業に散在しているデータを安全に統合・可視化し、迅速な意思決定を支援するためのDXインフラ整備ソリューションです。
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■Qlik Replicateについて
「Qlik Replicate」は、異種データベースだけでなく、メインフレーム、SAP、Salesforceなどのデータを分析基盤などへリアルタイムに連携するレプリケーションソフトウェアです 。
https://www.insight-tec.com/products/qlik-replicate/

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