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2024.01.19 08:45

罰則もある電子取引データの保存義務、4割は「理解していない」

リリースベース(松村)
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いよいよこの1月から、電子帳簿保存法による電子取引データの保存が義務化となったが、対応していない事業者はいまだ多く、電子帳簿法の改正内容やその意味も周知されていないようだ。

電子帳簿保存法は2021年に改正されたが、電子データの保存義務は2023年12月まで猶予期間が設けられていた。経済産業省では中小企業のIT化推進のための補助金を支給するなど、商取引の電子化を後押ししてきたが、どうも反応は鈍い。起業家や経営者の支援事業を展開する創業手帳が会員を対象に実施した「電子帳簿保存法改正内容の把握状況と対応実施状況に関する実態調査」(回答数338)で、その現実が見えてきた。

電子帳簿保存法とその改訂内容を理解しているかとの問いに、「理解している」と答えた事業者はわずか3パーセント。「なんとなく理解している」が56パーセント。「理解できていない」が41パーセントにのぼった。「なんとなく」は理解していないに等しい。

また義務化されたデータの保存を実施しているかとの問いに、「はい」は35パーセント、「いいえ」が31パーセントだった。問題は34パーセントの「よくわからない」だ。つまり、非常に関心が低いということだろう。

また、紙の帳簿や書類は、今後はスキャナーで電子データ化して保存しなければならないが、その実施率は「はい」が21パーセント、「いいえ」が66パーセント、「よくわからない」が13パーセントだった。

この保存法に違反すると、青色申告の承認が取り消されて特別控除が受けられなくなったり、推計課税や会社法による過料といった罰則もあるのだが、それすらも理解されていないのかと不安になる。

しかし、いまだに紙の請求書や領収書をやり取りしている事業者が一定数ある。取引先が電子化に応じてくれなければ、紙の書類をスキャンして保存し、紙は廃棄するといった余計な手間をかぶることになる。そうまでして帳簿を電子化しなければならない理由が、まず理解されていないのではないか。これをしたらどんな「いいこと」があるのかをハッキリ説明してもらえなければ、余裕のない中小企業は従来のやり方を積極的に変えようとは思わないだろう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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