働き方

2024.01.10 17:45

【Web特別寄稿】日本が「高賃金化」を達成するために必要な4つの仕掛け

藤吉 雅春
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全社業績連動型報酬制度について、その特長とメリットを見てみましょう。

1 .「高い目標を掲げる」ほうが合理的

まずは「目標設定」についてです。「目標を高くしたところで、自分に返ってくる報酬額がどれくらいになるか見えないので、低く設定しておいて、達成率を高くしよう」「あまり無理せずに目標を達成して、余暇の時間を増やすなどしたほうが合理的」という考えかたがあります。


つまり、粗利5,000万円を達成できる人が、「目標を4,500万円にして、着地5,000万円で、達成率111%になる」のと、「チャレンジングな目標7,000万円を掲げて、着地6,500万円で、達成率93%になる」のと、どちらのほうがいいのか(合理的か)? という話です。

通常の報酬制度では、目標の達成度で評価することが多く、「いくら粗利を増やしたところで、自分に分配される報酬が増えるわけではないので、前者のほうが合理的」ということになってしまいます。そのため、みんな低い目標を設定したがるのです。


しかし、全社業績連動型報酬制度があると、粗利額として1500万円の差が出ています。1000人が全員高い目標を掲げて邁進したらどうでしょうか。1500万円×1000人で、粗利において150億円もの差額が出ます。

もし、その10%が全社員に分配されたとすると、報酬原資が15億円増えることになります。それが個人収入にも反映されるとすると、高い目標を掲げたほうが合理的、となるのです。ちなみにこのとき、粗利も135億円向上しているわけですから、「会社としても(報酬分配後も)win」ということになります。

2. 人を増やすより「成長する」ほうが合理的

もし、全社業績連動型報酬制度がない会社で、上司が部下に新しいスキルが必要な仕事を命じたとき、部下はどのような反応をするでしょうか?

おそらく、「それ、私の仕事ですか? やったことないんですけど……」とやりたくなさそうにされたり、ほかの人に任せたり、場合によっては「私はできないので、新しい人を入れてください」と言われるかもしれません。その仕事を自分がしたところで、報酬が増えるわけではなく、頭を悩ませることが多くなり、仕事量だけが増えることになるからです。つまり、「新しいスキルを身につけて成長するより、人を増やしたほうが合理的だ」となってしまうのです。

しかし、全社業績連動型報酬制度があると、そうした考えかたは合理的とは言えません。なぜなら、むやみに人を増やすことは、個々の従業員の報酬を減らすことになるからです。全社業績連動型報酬制度のもとでは、「同じ人数で、個々のスキルを高めて成長し、生産性が高まる仕組みをつくり、1人当たりの付加価値生産性を高めたほうが合理的」ということになるのです。
次ページ > 3つ目の特長とメリット

文=田尻望

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