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2023.12.22 10:45

「ユニコーン100社輩出」には、失敗例を含めた可能性のシェアが必要だ

山本 智之

Drop of Light / Shutterstock.com

第54回世界経済フォーラム年次総会(通称「ダボス会議」)の開催まで残り1カ月を切った。今回もメディア・リーダーとして現地入りする予定だが、ダボスで考えたいテーマのひとつがユニコーンの可能性と世界経済フォーラムが果たす役割についてだ。

世界経済フォーラムは2022年にユニコーン・コミュニティを立ち上げた。活動に参加できるのは、世界経済フォーラムが厳選した評価額10億ドル以上の成長企業やミッション志向の企業たち。日本からは自動運転技術で知られるティアフォーや環境配慮型の素材・資源循環ビジネスを手がけるTBMがメンバーに選出されている。

しかしなぜ、世界経済フォーラムは新たにユニコーン・コミュニティを新設したのか。ユニコーンが果たし得る社会的意義と、コミュニティが目指す価値創出とは。世界経済フォーラム取締役で第四次産業革命センターを統括するジェレミー・ジュルゲンスに話を聞いた。



Jeremy Jurgens◎世界経済フォーラム取締役、第四次産業革命センター統括。マイクロソフト、パタゴニア、日本の財務省を経て1999年から世界経済フォーラムへ。最高情報責任者(CIO)、中国オフィス代表などさまざまな職務を歴任したのち現職。

──世界経済フォーラムがユニコーン・コミュニティを持つことの意義や狙いは。

私たちは長い間、世界最大級の多国籍企業と仕事をしてきた。そのなかで、新興企業が既存企業に絶えず挑戦し続けることがいかに重要かを見てきた。多くの革新的な技術や手段をもたらしている企業に早い段階から関わり、彼らが歩む道のりをサポートしようと考えた。

すべてのユニコーンや新興企業が日立製作所やソニーのような多国籍企業になるわけではない。だが、中にはそうなる企業もある。Forbesの世界トップ企業のリストを見ると、20年前には存在しなかった、あるいは小粒だった企業が名を連ねている。これらの企業が世界経済に多大なる貢献をしていることを認識する必要がある。

さらに重要なのは、彼らは複雑かつグローバルな社会課題に対して革新的なアプローチや変化をもたらしていることだ。世界経済フォーラムのユニコーン・コミュニティが他のコミュニティなどと異なる点のひとつは、各スタートアップが「自然と気候(Centre for Nature and Climate)」「エネルギーとマテリアル(Centre for Energy and Materials)」などフォーラムが持つセンター(部門)のひとつと連携し、世界的な主要課題に取り組めることにある。

スタートアップ・カンファレンスやインキュベーターの多くは、時価総額や価値が最大になりそうな企業に照準を当てている。一方、私たちは重要な社会課題に対して最大限の貢献ができる企業を見極めようとしている。これはユニコーンに限らず、世界経済フォーラムが関わるすべての企業に共通している。
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取材・文/瀬戸久美子 写真/世界経済フォーラム

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