ヘルスケア

2023.12.16 17:00

治験が始まった男性用経口避妊薬「YCT-529」についてわかっていること

遠藤宗生
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米国国立衛生研究所は、全世界の妊娠の半分近くが望まれない結果であるにもかかわらず、男性が取れる避妊方法はコンドームとパイプカット(精管切除)のみだと指摘している。男性用の避妊方法開発での課題は、男性が精子を1秒間に約1000個(1日に数百万個)産生するのに対し、女性は月に1回しか排卵しないことにある。

学術誌Journal of Clinical Endocrinology and Metabolismに掲載された試験結果によると、世界保健機構(WHO)が委託した男性避妊薬の第2相試験は、副作用が多かったたため2016年に中止された。ホルモン剤を注射された被験者は、96%の避妊効果がみられたものの、気分変動、にきび、うつ、自殺念慮など、女性用避妊薬と同じ副作用を訴えた。

ホルモン性の避妊ジェルは、男性用避妊薬として2022年に初めて第3相試験に進んだ。両肩に塗布することで、通常は精液1ml当たり1500万~2億個の精子濃度を同100万個以下に減らすものだ。ウンデカン酸ジメタンドロロンと呼ばれるホルモン性男性用避妊薬の試験も進められており、2019年に公表された研究結果では安全で効果があり、重篤な副作用もないと報告されている。

女性の避妊には、ピル(経口避妊薬)、避妊パッチ、IUD(子宮内避妊用具)、避妊リングなどさまざまな選択肢があり、71%から99%の有効性がある。ホルモン性避妊薬はメリットがある一方で、健康リスクも存在する。医療系ニュースサイトのHealthlineによると、副作用には気分変動、血栓、体重変化、膣内炎症、片頭痛などがある。最近の研究では、ホルモン性避妊薬を使用した女性は乳がん発生のリスクが高まることが示された。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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