経営・戦略

2023.12.12 07:15

製造業のDXで人手不足改善は7割超 DXできない企業の深刻な事情

リリースベース(松村)
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日本の製造業の人手不足はますます深刻化している。求人しても人が来ないのなら、別の方法で対策するしかない。その決め手がDXだ。事実、DXで業務が大幅に改善された企業は多い。しかしその一方で、DXが進まない企業もある。なぜだろうか。

製造業向けクラウドサービスを展開するキャディは、製造業に勤める918人を対象にDXに関するアンケート調査を行った。すると、人手不足による課題を感じている人は9割。とくに購買と調達を担当する人は10割にのぼった。どのような課題かを尋ねると、全体では品質管理がトップだったが、購買、調達部門では「経験豊富な高齢者の退職による専門知識の喪失」が群を抜いて多かった。さらに、生産ラインの停止、人手不足を補う残業代の増加、未熟な労働者の増加によるリスクの上昇、新規事業の開発や既存事業の拡大ができないと続く。

それでもDXが進まない企業が多い。その理由のトップは「予算の制約」だが、2位と3位は「適切なITスキルを持った人材の不足」、「リーダシップとビジョンの不足」となっている。ここまでは、DXしたくてもできない悩みだ。適切なコンサルティングを受ければ推進できる可能性がある。厄介なのは、「複数部門を横断する協調作業の調整」、「レガシーシステムとの統合」、「組織文化と変革への抵抗」といった変化を嫌う体質だ。会社全体の意識改革が必要となる問題だけに、一朝一夕には解決できそうにない。2024年度のDX投資予算は、65パーセントが現状維持。増加するという答えは3割に満たないことから、しばらくは今の状態が続きそうだ。

しかしその一方で、クラウドサービスを導入して業務が改善された割合は、購買、調達部門では76パーセントに達している。全体でも66パーセントと、DXの効果は明らかに表れている。DXはしないという企業の判断なら仕方ないが、熟練者の技能が失われるのは社会的損失だ。技能や知見の継承もDXの得意分野なのだが。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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