DCM日本代表・ゼネラルパートナー、本多央輔(左)と
freee代表取締役、佐々木大輔(右)。

淡々、飄々と日本を変えていく起業家

佐々木大輔が創業したfreeeは、中小企業向けに全自動のクラウド型会計ソフト「freee(フリー)」を提供。2013年3月のサービス開始以来、利用事業者数は増加し続け、33万を突破した。
 
米大手VC・DCMの本多央輔日本代表・ゼネラルパートナーは、計3度、創業初期の12年末のシードラウンドから投資を行っている。

本多:シリコンバレーのVCファンドに期待されていることは「世の中を変えるベンチャー企業」に投資をすること。佐々木さんのfreeeは、日本に新しい価値をもたらす会社で、ご自身も日本を変えられる起業家だと思います。
 
佐々木さんと投資の話をはじめたのは、2012年の創業初期。当時、SMBと呼ばれる中小企業向けのクラウドサービスはいまほど盛り上がっておらず、会計ソフトも山ほどあったので競争環境は必ずしもよくありませんでした。
 
しかし、VCの仕事のひとつは、逆張り。調べていくと、コンシューマー向けの便利な会計ソフトがなく、市場に成長機会があるというデータが出て、佐々木さん自身も米グーグルでSMB向けマーケティングのアジア・パシフィック統括責任者をされていたという、専門家かつ能力の高いアントレプレナー。さらに母校・一橋大学の先輩後輩だったことも後押しし、投資をしました。

佐々木:創業当初は、毎日20時間近く、ひたすらコードを書いていて「資金調達……したいけど、面倒臭いね」という感じで。本多さんから声をかけてもらったときも「すぐに決めてくれるならば、お願いします」と。社員第1号が入るか入らないかという時期でしたから。

本多:その年の忘年会は、佐々木さんの自宅兼事務所で、インターン生を含む5~6人で鍋を食べるという、社員100人規模のいまでは考えられないことをしましたよね(笑)。

佐々木:本多さんとのエピソードで印象深いのは、最初の投資委員会で「控えめに言い過ぎる」と言われたこと。「もし他国の起業家だったら、動かないプロトタイプを『これは完成間近で明日リリースできる』と言う。そういう人たちと戦う世界では堂々と話さないと光らないよ」と。かなり勇気づけられました。

本多:起業したての頃は、サービスも売り上げもないので、佐々木さんという“人物”と“ビジョン”を伝えるしかない。ビジョンに、はったりもクソもない。ビジョンはビジョンですから。

佐々木:僕らのミッションは「スモールビジネスに携わるすべての人が、創造的な活動にフォーカスできるよう」。中小企業がビジネスを行う上で、何から何までクラウド上でできる社会をつくりたい。私はいま、事業を伸ばすことにしか関心がありません。IPOの話は周囲の起業家が驚くくらいしていませんね。

本多:僕は佐々木さんのビジョンに共鳴し投資しています。だから、その実現のサポートが仕事。VCは起業家の伴走者という人がいますが、僕はそうは思っていません。F1に例えるなら、佐々木さんはレーサーで、僕はピットクルー。「そろそろタイヤ交換した方がいいですよ」「いま、アクセル踏んでおかないと後ろから迫ってくるよ」というアドバイスをする役割だと思っています。最終的にレースに勝つために助手席とはまったく違う視点で見ている存在でありたいと思っています。
 
とはいえ、佐々木さんは、米インテュイット創業者と会い、「俺の若い頃にそっくりだ」と惚れ込まれても、淡々と飄々としている起業家。すごいんです(笑)

山本智之 = 構成 平岩享 = 写真

 

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