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2023.12.01 14:00

デジタル化とグリーン化を同時にかなえる。東京エレクトロンの経営者が語った「7つの攻め方」

河合利樹|東京エレクトロン代表取締役社長・CEO

「ステークホルダー資本主義ランキング」で1位にランクインした東京エレクトロン。デジタル化と脱炭素化というふたつの課題を前に代表取締役社長・CEOの河合利樹が示す「攻めの解決策」とは。

「どのような状況でも経済活動が止まらない強くしなやかな社会であると同時に、便利で人や環境に優しい社会。この理想を実現するには、デジタル化と脱炭素化の両立が不可欠だ」

あなたが描く理想の未来と、その未来を実現するために必要なことは何か。この質問に、東京エレクトロン代表取締役社長・CEOの河合利樹が出した答えだ。

半導体製造装置のリーディングカンパニー、東京エレクトロン。地域別の売上高構成比の8割以上が海外という、日本発のグローバル企業である。

データ社会を迎えた今、半導体は私たちの暮らしになくてはならない存在だ。足元では、マクロ経済の減速懸念や電子機器の需要低迷などで半導体市場は調整期にある。だが、生成AIや自動運転など、新たなアプリケーションの開発・実装を支えるのは半導体のさらなる進化だ。

「さまざまなアプリケーションが出てきた結果、半導体の需要が高まったと解釈する人もいるが、半導体の進化がさまざまなアプリケーションの登場を可能にしているとも言える」

製造装置なくして高性能の半導体をつくることはできない。東京エレクトロンは世界で唯一、半導体の微細加工に必要なパターニング工程の4つのキープロセス装置(成膜、塗布・現像、エッチング、洗浄)を保有している。EUV(極端紫外線)露光用の塗布・現像装置に至ってはシェア100%を誇り、「最先端の半導体で、当社の装置を通らずにつくられたものはほぼないと言っても過言ではない」と河合は話す。

この東京エレクトロンが今回、ForbesJAPANの「ステークホルダー資本主義ランキング」で1位にランクインした。データ解析を手がけたサステナブル・ラボESGリサーチ&ソリューションディレクターのインゴ・ティートベールは、高評価の理由をこう解説する。

「半導体は電子機器関連のエネルギー効率の向上や省エネ技術に大きく貢献している。東京エレクトロンは半導体製造装置メーカーとして、技術革新と持続可能性の両輪を回しながら企業価値の最大化につながるESG経営を実践している。サプライチェーンマネジメント、人的資本、ガバナンスのレベルがそれぞれ高く、各分野の取り組みが他分野にも好影響をもたらすなど総合力の高さが際立つ」(ティートベール)

気候変動対策や生物多様性の保全が待ったなしの今、半導体業界には性能向上と環境負荷低減の両立という大きな課題がある。通常、高性能な半導体ほど多くの電力や水、化学物質が必要なためだ。「データ通信量がこのまま増え続ければ、ともすると20年以内にエネルギー生産が追いつかなくなる」

デジタル化と脱炭素化をともにかなえるには半導体の技術革新が欠かせない。河合が率いる東京エレクトロンは自社の専門性をフルに活かしながら、この難題に挑んでいる。
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文=瀬戸久美子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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