ヘルスケア

2024.02.08 07:30

3D印刷された「バーチャル頭蓋骨」、先天性欠損の新生児を救う

石井節子

Wonderfulengineering

新生児の中には、生まれつき異常があったり、体の一部が欠損していたりする子がいるが、とりわけ「頭蓋骨」の一部が欠損している場合、命が重大な危険にさらされることは当然だ。

しかし最近、科学者、エンジニア、医師のグループが協力、「3Dプリントした頭蓋骨」を提供し、なくなった頭蓋骨を補うことで、子どもの命を救った。

ポーランドのシグニス社が提供した赤ちゃんの3Dプリント頭蓋骨は、新生児の命を救い、長生きのチャンスを与えるもので、医療工学における重要な一歩となった。



成人の手術とは対照的に、新生児の処置はより繊細であり、医療専門家は一刻を争うため、答えを見つけるために迅速に行動しなければならない。このケースでは、少女は後頭骨が完全に発達していない状態で生まれたため、脳組織が部分的に露出しており、生後4日以内に手術が必要だった。医師はシグニス社に、骨の欠損部位を視覚化し、手術中に直面するであろう状況を正確に予測するためのプロトタイプの作成を依頼した。

乳児は生後間もなくクラクフ大学小児病院に送られ、MRIとCTスキャンによって頭蓋骨のバーチャルモデルが作成された。このモデルはシグニスのエンジニアに渡され、エンジニアが正確な3Dモデルを作成した。

この処置は、何かを置き換えるのではなく、赤ちゃんの将来の生存のために必要な、欠けていた非常に重要な体の部分の隙間を埋めるものだった。



シグニス社は、e-Nableポーランドおよび上部シレジア小児保健センターと協力して、手術後の新生児の安全と生存を保証、手術は成功したという。

画像分割とプリント用3Dモデルの作成を担当したパヴェル・オズガだけでなく、関係者や専門家と話をする時間が96時間しかなかったと述べている。次に研究者たちは、出産時に欠損した新生児の後頭骨を使って頭蓋骨を作成した。

ゼロから出発し、必要な材料を正確に定義することで、3Dプリンティングは、ユーザーが図面だけで完成品を製造することを可能にする。しかし、専門家や研究者が欠損した臓器を提供したり置き換えたりする新しい方法の発見に取り組む中で、3Dプリンティングは医療技術に大きな飛躍をもたらす。



2015年の報告によると、3Dプリンティングの進歩は、ユーザーが寄付によって受け取ることが困難な必要不可欠な臓器や人体の一部を利用できるようにすることで、現在の医療に革命をもたらすだろう。それ以来、3Dプリント技術は著しく向上し、何百万人もの命を救っている。


(この記事は、英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」から転載したものです)

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