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2023.11.24

アルゼンチンの新「チェーンソー大統領」 エネルギー大国へ猛進

2023年9月25日、ブエノスアイレスで支持者を前にチェーンソーを振り上げるハビエル・ミレイ下院議員=ゲッティ

「自由万歳だ、畜生!」──。アルゼンチン大統領選の決選投票で勝利を決めたハビエル・ミレイ下院議員(53)は19日夜、選挙戦の決まり文句を繰り返し、喜びを爆発させた。経済学者出身のミレイは「小さな政府、私的私有権と自由貿易の尊重」を確約し、「退廃のモデルは終わりだ。後戻りはない」と続けた。

ぼさぼさのヘアスタイル、飼い犬の大きなマスチフ4匹などでも知られるミレイは、若いころ、英ロックバンドのザ・ローリング・ストーンズのコピーバンド、その名も「エベレスト」でフロントマンを務めたこともある。選挙戦ではヴェルディのオペラ「椿姫」を歌ってみせたり、自身が奉じるアナルコ・キャピタリズム(無政府資本主義)にちなむ「アンキャップ将軍」の黒と黄色のスーパーヒーロースーツに身を包んだりもした。

自由市場のヒーローであるミレイは、同じアルゼンチン出身のローマ教皇フランシスコを「共産主義者のクズ」とけなしたこともあり、銃の個人所有の拡大にも意欲を示す。支持者の前ではお気に入りの小道具であるチェーンソーを始動させて振り回し、アルゼンチンの悪名高い規制や福祉国家をぶった切るとアピールした。アルゼンチンは、わずか600万人ほどの民間部門の労働者が、2000万人にのぼる公務員や年金生活者を支えるという経済構造にある。

「きょう、アルゼンチンの再建が始まる」。ミレイはそう宣言した。「アルゼンチンの衰退はきょうで終わりだ。国を貧しくする大きな国家モデルとはきょうでおさらばだ。一部の者だけが恩恵を得て、多数派が苦しむモデルと決別する」

ミレイは大豆や牛肉などアルゼンチンの主要農産物の輸出税を撤廃する意向で、アルゼンチン中央銀行を「ダイナマイトで吹き飛ばす」とも息巻いている。ミレイはアルゼンチン中銀を世界最悪の中銀と断じ、年率140%に達するインフレの元凶のひとつだとみなす。国際通貨基金(IMF)による再度の救済(直近では2018年に570億ドル=現在の為替レートで約8兆5000億円の融資を受けた)を避けるべく、通貨アルゼンチン・ペソの廃止や経済のドル化も主張している。

とはいえ、ミレイ政権の誕生による最も大きな影響は、アルゼンチンでの強大なエネルギー産業の勃興ということになりそうだ。事実、アルゼンチンの半国有石油会社YPFの株価は20日、ミレイの勝利と石油産業推進への期待から前営業日に比べ25%急騰した。

「YPFは移行期、つまり経済の不均衡が是正される間の道具立てにならなくてはいけない」とミレイは6月に語っている。YPFは2022年に30億ドル(約4500億円)の純利益をあげており、ミレイは完全民営化をめざしている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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