欧州

2023.10.18 12:00

70年前の輸送車で敵陣に突撃 自殺同然の作戦で死んだロシア兵たち

遠藤宗生
2035

BTR-50装甲兵員輸送車(Karasev Viktor / Shutterstock.com)

ロシアは7カ月前、装軌式の装甲兵員輸送車(APC)であるBTR-50を長期保管庫から引っ張り出し、一部には武装強化を施してウクライナの戦線に送り込み始めた。

驚くべき展開だった。BTR-50は年季の入ったAPCだ。名称から推察される通り、1950年代に設計・実戦投入された。

ロシア軍は最近まで支援任務に特化したBTR-50の派生型を数両保有していたが、前線に投入するものに関してはずいぶん前に、大幅に改良された装輪式のBTR-60やBTR-70、BTR-80と入れ替えた。ウクライナで戦う部隊には試作車両のBTR-90さえ数両配備されている。

だが21カ月の厳しい戦いで何千両もの戦闘車両を失ったいま、ロシアは損失を埋めるAPCの確保に必死だ。手に入るのはせいぜい70年前のBTR-50、ということもある。

旧式で防御力の低いBTRの配備には犠牲が伴う。それは先週、ウクライナ東部ドネツク州のアウジーイウカで現実のものとなった。ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派が樹立を宣言した「共和国」の「首都」であるドネツク市のすぐ北に位置するアウジーイウカに向かって、ロシア軍の複数の連隊が必死の攻勢をかけていたときのことだった。

いくつもの長い装甲車の列をなしたロシア軍は、南と北からアウジーイウカの側面を攻撃しようとしたが、ウクライナ軍の地雷や砲撃などを受け、大敗した。

数日にわたる無謀な戦闘で、ロシア軍は多くの車両を失った。1両のBTR-50は地雷を踏み、爆発してひっくり返ったようだ。ウクライナ軍のドローンは、BTRに乗っていた複数の兵士の遺体が道路に散らばる様子をとらえた。

どんな車両も、地雷や強力な対戦車砲には弱いが、BTR-50は特にそうだ。

BTR-50の派生型であるBTR-50Pは、重量15トンのディーゼルで動く装甲牽引車だ。乗員は2人、最大20人の歩兵が乗れるスペースがある。通常、重機関銃を搭載している。

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翻訳=溝口慈子

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