北米

2023.10.10 14:00

ケネディJr.が無所属での出馬に転換 米大統領選、バイデン再選の脅威に

安井克至

米ペンシルベニア州フィラデルフィアで、無所属での大統領選出馬を表明したロバート・F・ケネディ・ジュニア(2023年10月9日撮影、Gilbert Carrasquillo/GC Images)

2024年の米大統領選に向けて民主党の指名候補争いに立候補していたロバート・F・ケネディ・ジュニアは9日、無所属で出馬すると発表した。民主党のジョー・バイデン大統領、共和党のドナルド・トランプ前大統領と争うことになった場合、トランプよりバイデンが大きな打撃を受けるとの調査結果があり、再選をめざすバイデンにとって脅威になりそうだ。

ケネディ・ジュニアは故ロバート・ケネディ元司法長官の息子で、故ジョン・F・ケネディ元大統領のおいにあたる。環境保護に力を入れる弁護士で、新型コロナウイルスやワクチンなどをめぐって陰謀論めいた主張を広めたことでも知られる。

4月に民主党の指名候補争いへの出馬を表明して以降、民主、共和両党の指導部は腐敗しているなどと両党を批判していた。民主党全国委員会が討論会の開催拒否や選挙日程の変更によって予備選挙を「不正操作」しているとの持論も繰り返していた。

ケネディ・ジュニアは9日、ペンシルベニア州フィラデルフィアの集会で支持者を前に演説し、民主党の指名候補争いへの出馬取り下げと独立候補としての立候補を明らかにした。鞍替えは陣営が事前に報道発表で示唆していた。

ケネディ・ジュニアの無所属での出馬は、米国の名門政治一族であるケネディ家が長年保ってきた民主党への忠誠からの離反という格好になる。演説では「軽々しい決断ではなかった」「(民主党を)離れるのはとてもつらいことだ」とも語った。

ケネディ・ジュニアは「みなさんといっしょに、わたしたちの国の新たな独立宣言をするためにここに来ました」と述べ、政治が距離を置くべきだと考える外部の巨大権力として「ビッグアグ(巨大農業企業)、ビッグテック、軍事請負企業とそのロビイスト、打算的なメディア」などを挙げた。

ケネディ・ジュニアは当選の見込みは薄いと広く考えられている半面、第3極の候補としては歴史的にみても高い支持率を誇っており、民主、共和両党の指名候補から票を取り込む可能性がある。

トランプよりもバイデンが不利に

ロイター通信と調査会社イプソスによる最近の世論調査では、民主党のバイデン、共和党のトランプ、無所属のケネディ・ジュニアの3者による対決になった場合、バイデンは31%、トランプは35%、ケネディ・ジュニアは14%の支持を集めるという結果になった。

バイデンとトランプの2者による一騎打ちの場合は、それぞれ35%の支持を得るという結果だった。ケネディ・ジュニアの純好感度は民主党支持層よりも共和党支持層のほうが高いという調査結果もあるものの、今回の調査結果はケネディ・ジュニアの無所属での出馬はバイデンのほうが打撃が大きいことを示唆する。

一方、米ニュースサイトのセマフォーは、トランプ陣営内部の世論調査では、ケネディによって奪われる票はバイデンよりトランプのほうが多い可能性を示す結果もあると報じている。

「危険」と身内から批判

ケネディ・ジュニアの発表後、きょうだい10人のうち4人は連名で声明を出し、無所属での出馬は「危険」だと批判した。上院議員なども務めた父親のロバートとは「価値観もビジョンも判断力も違う」とも断じた。

共和党全国委員会も声明で、ケネディ・ジュニアは「無所属を装った民主党員」だと主張し、鞍替えを非難した。ケネディ・ジュニアが2016年の大統領選で民主党のヒラリー・クリントン陣営を支持したことにも言及し「典型的なリベラル派のエリート」とレッテルを貼った。

米大統領選をめぐっては先週、緑の党の候補指名争いに名乗りを上げていた左翼の学者コーネル・ウェストも、無所属で出馬すると表明している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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