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2023.10.11

人の歩行を電力に変える「発電タイル」の英スタートアップ

Getty Images

ロンドンを拠点とするスタートアップPavegen(ペイブジェン)の創業者でCEOのローレンス・ケンボールクックは「私たちの使命は、世界を一歩ずつ変えていくことだ」と語る。同社は、人の歩行による運動エネルギーを電力に変換する「発電タイル」を開発した。

ペイブジェンは先日、クラウドファンディングサイトのCrowdcubeで200万ポンド(約3億7000万円)の資金調達キャンペーンを立ち上げたが、同社の事業の原点は約15年前の失敗にあるという。その当時、大学生だったケンボールクックは、再生可能エネルギーで街灯の電力をまかなうシステムの開発に失敗し、大手エネルギー企業でのインターンシップを途中で離脱したのだった。

しかし、この挫折から立ち直った彼は、大学に戻って別のアイデアを具体化することに決めた。ペイブジェンは今では、人がタイルの上を歩くと一歩ごとに2~4ジュールの電力を発生させる特殊なタイルの開発を成功させ、さまざまな用途にエネルギーを供給しようとしている。

ペイブジェンのこれまでの道のりは、決して平坦なものではなかったとケンボールクックは話す。彼は、2009年に最初のプロトタイプを設計した後に7年間をかけて製品を完成させたが、周囲の反応は鈍かった。

そのため彼は真夜中のロンドンの中心部に無許可でプロダクトを設置し、その模様をネットで公開した。すると、そのビデオはショッピングセンター大手のウェストフィールドの目に留まり、同社はペイブジェンの最初の顧客となった。

それから7年が経った今、同社はナイジェリアのサッカー場からブラジルの貧民街まで、37カ国にこのテクノロジーを導入しており、英国では複数の駅に携帯電話の充電ステーションを設置した。

ペイブジェンのテクノロジーは、さまざまな分野で導入されつつあるが、ケンボールクックが最も興奮しているのは、アメリカンフットボールのミネソタ・バイキングスとの新しいプロジェクトで、今後は他のNFLのチームとの取り組みにも期待している。同社はさらに、サウジアラビアで大規模な環境都市プロジェクトを手がけるプランナーと協力している。

世界のESG投資市場は50兆ドル規模に

ペイブジェンは、ベンチャーキャピタルからも資金を調達したが、今回のクラウドファンディングを、自社のストーリーを届けるチャンスだと考えている。同社はこれまで一切、マーケティングを行ってこなかったが、売上高は昨年、これまでの2倍の200万ポンドに達したという。

世界のESG(環境・社会・ガバナンス)投資市場は2025年までに50兆ドル以上の規模になると予想されており、世界中のあらゆる都市や企業の二酸化炭素(CO2)排出量の削減を支援するペイブジェンが、巨大なポテンシャルを秘めていることは明らかだ。

「私たちのチームは根本的な変化を世界にもたらそうとしているが、同時にそれを楽しみながらやろうとしている。私個人は、プロダクトのデモに参加した人たちが、自分の一歩で電力が起こせることを知ったときの笑顔を見るのが好きだ」とケンボールクックは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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