「おぱんちゅうさぎ」が大ヒット 可哀想に!がZ世代の心をつかむ理由

田中友梨

可哀想に!

「おぱんちゅうさぎ」は、頑張り屋で、いつもみんなを助けようと奔走する優しい性格なのに、それがどうにも報われない、不憫でかわいらしいうさぎのキャラクターだ。

X(旧Twitter)の公式アカウントのフォロワーは70万人以上(2023年9月時点)と、SNSを中心に人気を博すこのキャラクターを生み出したのが、今年の「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」に選出されたイラストレーターの可哀想に!だ。

10~20代を中心に多くの若者の心をつかむキャラクター制作の才能は、多方面で高く評価され、企業とのコラボレーションも次々と手掛けている。

ヒットメーカーの可哀想に!に、「おぱんちゅうさぎ」誕生の背景や仕事にかける想いを聞いた。

ドーナツ屋さんになりたかった

可哀想に!が絵を描く仕事を意識し始めたのは、小学生のときだった。

「それまではドーナツ屋さんになりたかったのですが、小学校で周囲に『絵がうまい』と言われ、ドーナツ屋さんよりマンガ家の方が自分に合っているのかもしれないと思うようになりました。それで、少女マンガ雑誌の真似をしてマンガを描いて、友だちと第二の『ちゃお』みたいな雑誌をつくっていました」

マンガやアニメを鑑賞するのも好きで、幅広くいろいろな作品を見た。また、小学2年生ごろから自宅のパソコンでインターネットを使って、YouTubeなどにも触れていた。

「同世代の子に比べて早い時期からネットに触れていたので、見てきたコンテンツが周りと微妙に違うんですよね。でも、子どものころからネットに触れ、SNSにも慣れていたことが、今の仕事にも役立っているのかもしれないなと思います」

中学、高校と成長していく中で、ただ思いつくストーリーを描くだけでなく、「面白さ」を意識するようになった。元々周りを笑わせるのが好きな子どもだったので、それを作品にも反映しようとしたのだ。高校生になると、親に自分用のパソコンを買ってもらってオリジナルアニメの制作も始めた。

「まず動画編集が好きになって、友だちの誕生日に動画をつくってプレゼントしたりしていました。その流れでアニメーションもつくれるかもしれないと思ってやってみたら、意外とできるぞって」

「可哀想に!」の名前でSNSを始めたのは、大学在学時だ。現役で多摩美術大学の美術学部に入学し、1年次は山のような課題に忙殺されたが、2年次にコロナ禍でリモート授業となり、課題もリモートでできるものに限られたため時間ができた。

「やることがなかったので、Twitter(現X)でイラストや日常のつぶやきをマルチに投稿するためのアカウントを立ち上げました。課題に追われていた頃、大学の友人たちが『明日が見えない』『絶望』といった名前でSNSをやっていたので、周りに合わせて『可哀想に!』と名付けました」
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文=三ツ井香菜 取材・編集=田中友梨

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